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エイズとHIV感染

正しい知識を持っていますか?

 エイズを根絶させる治療法が確立されていない今、エイズをこれ以上拡大させない方法は、エイズについて正しく知ることが第一です。

エイズとは

エイズとHIV

Acquired Immunodeficiency Syndrome (AIDS) 後天性  免疫不全   症候群 Human Immunodeficiency Virus (HIV) ヒト  免疫不全    ウイルス

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 エイズ(後天性免疫不全症候群)とは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染して起こる(後天性)病気で、感染すると、身体を病気から守る免疫系が破壊され、身体の抵抗力が低下して、さまざまな感染症や悪性腫瘍にかかってしまいます。
 HIVは、皮膚の傷口や口、性器などの粘膜から侵入します。症状はすぐに出るわけではなく、HIVに感染してから、約1〜2週間後に風邪とよく似た急性感染症状が現れることもありますが、その後は(平均して8〜12年という非常に長い期間)特に何の症状も現れず(この時期にある人を「キャリア」と呼ぶ)、いくつかの要因が引き金となって日和見感染症やがん、脳障害が引き起こされ、エイズの発病となります。
 キャリアの時期は特に症状はありませんが、他人にウイルスを移す危険性があります。

エイズの歴史とエイズの脅威

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 エイズの最初の報告があったのは1981年のことです。アメリカのロサンゼルスで男性同性愛者5名がカリニ肺炎という肺炎を起こし、その後も男性同性愛者がカポジ肉腫を発症しています。また、静脈注射による麻薬の使用者、血友病患者、輸血を受けたことのある男女、異性愛者の男女などにも同様の症例が見られることがわかり、翌年に後天性免疫不全を基礎とする疾患として「エイズ」と名付けられました。
 研究者たちはその原因を究明していくなかで、エイズを引き起こすウイルスを発見。1986年にこれをHIVと命名したのです。日本では1985年に最初のエイズ患者(血友病)が認定され、1987年には神戸で日本人女性がエイズで死亡しています。また、1990年には日本で最初の母子感染例も報告されました。
 エイズの驚異は瞬く間に世界中を駆けめぐりました。それはなぜかというと、HIVは人間の本能に結びついている性行為によって感染するため、人間が生きている限りなくなることはないからです。また、HIVに感染しても無症状の期間が長く続くため、その間は本人さえ気づかず、その間にHIVを他の人に感染させてしまう危険性があります。そのため、世界中でエイズ患者が急激に増えていったのです。  しかし、エイズの場合は、正しい知識を持って実行さえすれば、比較的容易に予防できます。エイズを正しく知り、予防していきたいものです。

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エイズは今

日本では

HIV感染者およびエイズ患者数

 厚生労働省エイズ動向委員会の発表(令和4年エイズ発生動向年報)によると、日本での2022年のHIV感染者とエイズ患者の発生は、合わせて735件でした。HIV感染者もエイズ患者数も2014年以降、減少傾向にあります。

感染経路

 HIV感染者の感染経路については、2022年の報告では、合計527件のうち異性間の性的接触が76件(14.4%)、同性間の性的接触が385件(73.1%)で、性的接触によるものが合わせて154件(87.5%)を占めています。
 HIV感染者は男性が515件、女性が12件で、男性の方が圧倒的に多くなっています。

感染地域

 HIV感染者の推定感染地域は、全体の87.7%(462件)が国内感染で、エイズ患者の場合も74.5%(155件)が国内感染でした。
 報告地としては、東京都および関東・甲信越がHIV感染者全体の48.8%、エイズ患者全体の43.3%と多く、次いでHIV感染者では近畿(16.3 %)、東海(9.1%)エイズ患者では九州(19.7%)、近畿(13.9%)となっています。

世界では

 現在、世界には、2023年末現在の推定でHIV感染者が3,900万人、新規HIV感染者数が130万人、エイズによる死亡者数が63万人と報告されています。なかでも感染者、患者数が集中しているのが東部及び南部アフリカで、HIV感染者が2,080万人と全体の50%以上を占めています。新規HIV感染者数も50万人(約38%)、エイズによる死亡者数は26万人(約41%)となっています。次いで、西部及び中央アフリカ、アジア太平洋地域での感染者が多くなっています。

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感染から発病までの症状

感染の経緯

感染

(数週間以内)
無症状の人がほとんどですが、インフルエンザのような症状が出て、10日間くらい続くことがある。この時期はまだ抗体ができていないので、検査しても陽性反応は出ない。
(感染して約6〜8週間程度で血液中にHIVの抗体ができるので検査可能になる)

無症状の期間(キャリア)

平均8〜12年
全身のリンパ節が腫れてくる。

エイズ関連症候群
  • 免疫力が非常に落ちてくる。
  • ひどい寝汗、疲れやすい、発熱や下痢が1か月以上続く、体重が10%以上減少することもある。

発病

治療しないと平均2年で約75%は死亡。

エイズの症状

 全身が衰弱してきたり、健康な人では病気を起こさないような病原性の弱い微生物でも、感染症を引き起こします。これが日和見感染症で、下記のようないろいろな症状が現れてきます。

  • カリニ肺炎、カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症、結核、HIV消耗性症候群など
  • 神経症状(脳炎、HIV脳症など)
  • 悪性腫瘍(浸潤性子宮頸がん、カポジ肉腫など)

感染のしくみ

 HIVは、ヒトの免疫システムに重要な役割を果たしているT4細胞(CD4リンパ球)に感染します。
 通常、体のなかに細菌などの異物が入ってくると、T4細胞が中心となって抗原に合わせて抗体をつくり、異物を排除しようとしますが、HIVが侵入してくると、T4細胞が破壊され、十分な抗体をつくる力が低下し、HIVが増殖していってしまうのです。
 感染しても無症状の期間には、このT4細胞をはじめとする免疫システムとHIVが体内で戦っています。そして、何かのきっかけでHIVが総攻撃を開始し、T4細胞の数が激減して、体の免疫システムが完全に破壊され発症します。

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感染経路

 HIVの感染源や感染経路ははっきりしています。感染源は血液・精液・膣分泌液・母乳の4つです。唾液や汗、涙などでは感染しません。しかし、HIVの感染力はそれほど強くはありません。B型肝炎ウイルスなどに比べると、わずか100分の1程度の感染力であるといわれています。
 HIVの感染経路は次の3つです。

  • 血液感染
  • 性行為感染
  • 母子感染

血液感染

 血液を介して感染します。つまり、感染者の血液が体のなかに入ると、98%が感染するといわれています。例えば、感染者の血液が傷口や粘膜に触れたことや、感染者からの血液や臓器の提供、注射針の共用(麻薬の回し打ちなど)が考えられます。日本では現在、すべての献血血液に対してHIV抗体検査が行われているため、血液の提供から感染することはまれですが、完全にないとは言えません。注射針の共用については、医療機関では器具の使い捨てや消毒などが徹底されています。

感染者の血液が傷口や粘膜に触れる(カミソリや歯ブラシを感染者と共用するなど)
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感染者の血液や臓器の提供
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注射針の共用(麻薬や覚醒剤の回し打ちなど)
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|血友病と薬害エイズ|

 血友病とは、血液中にある血液凝固因子という血液を固める働きをするたんぱく質の一部が不足しているため、いったん出血すると血が止まりにくいという病気です。一般的に男性のみがかかり、出血の後遺症により手足に障害をもっている人も少なくありません。
 血友病の治療には、血液から凝固因子だけを取り出してつくった血液凝固剤という薬を注射して補充します。1978年には高濃縮製剤がつくられるようになり、血友病患者の止血治療が容易になりました。83年にはこの血液製剤の家庭注射が認められ、血友病患者の社会的行動範囲が一気に広がったといいます。
 しかし、この薬は大量生産が簡単というメリットがある反面、品質・安全管理のチェックがしにくいことや、加熱殺菌がなされていないなどの問題点がありました。85年以降はこの非加熱製剤の危険性がわかってきて、加熱製剤が用いられるようになりましたが、患者のなかには加熱製剤が承認されたあとも非加熱製剤を使用され、それが原因でHIVに感染した人もいます。これが薬害エイズです。

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性行為感染

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 現在、全感染者のうち性的接触による感染者が主流を占めています。感染者との無防備なセックスが感染の危険をはらんでいるのです。
 HIVは、感染者の精液、膣や子宮頸管からの分泌液などが粘膜や傷口に接触して感染します。なかでも同性愛者や両性愛者に感染者が多いのは、直腸内に射精するアナルセックスをするためです。これで直腸の粘膜に傷が付きやすくなります。膣性交や口を使うオーラルセックスでも、粘膜を傷つけることで感染します。
 また、性感染症(STD)を持っているHIV感染者とセックスすると、さらにHIVが感染しやすいと言われています。

|こんな性行為は危険|
  • コンドームを使用しない

    コンドームを使用すれば感染率は1回で0.1〜1%程度といわれている。コンドームをつけても、破れて予防に失敗する可能性が高い。

  • アナルセックスをする

    この場合が性行為のうちで最も高い感染率となっている。

  • オーラルセックスをする(される)
  • 膣や肛門に入れる性具の共用

母子感染

 母子感染には、胎内感染、産道感染、母乳感染の3つがあります。母親が感染している場合は、生まれてくる子どもの20%が感染する可能性があります。感染者が子どもを産む場合は、医師に相談する必要があります。

HIVの感染予防

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  • 不特定多数の人との性行為をしない。
  • 無防備な性行為はしない。正しいコンドームの使用をする。
  • 麻薬や覚醒剤などの薬物乱用は絶対にしない(注射の回し打ちで感染する可能性がある)。
  • 感染者の歯ブラシやカミソリを共用しない。

HIV感染者から他のヒトへの感染予防

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  • セックスパートナーに感染していることを伝える。
  • セックスのときはコンドームを使用する。
  • カミソリ、歯ブラシは自分専用のものを使う。
  • 血液は自分で処理する。
  • 血液が付いた衣服やシーツはなるべく早く石けんで洗い、流水で十分に洗い流す。
  • 献血や臓器提供はやめる。
  • 妊娠や出産については専門医に相談する。

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エイズの相談と検査

 エイズに関する相談は、全国の保健所で受け付けています。また、エイズ予防財団においても受け付けています。感染の機会がある人や、心配や不安、疑問を感じる人は、まず電話して相談してみましょう。
→エイズ予防財団(http://www.jfap.or.jp/

HIV検査

 エイズの検査は、HIVが体のなかに入って、免疫システムによってできる抗体の有無を調べます。この抗体がつくられるまでには、感染してから約6〜8週間ほどかかります。そのため、感染した可能性のある機会があってから3か月以上経って検査するのがよいでしょう。
 検査は下記で実施しています。検査結果は1〜2週間後に出て、本人に通知されます。

保健所

無料、匿名で行えます。地域によって検査時間が異なるので、事前に確認しましょう。

エイズ治療拠点病院

全国に366カ所あります。この検査は有料です。
→エイズ予防財団(http://www.jfap.or.jp/

一般の医療機関

有料です。

検査の流れ

受付

保健所
エイズ拠点病院
一般の医療機関

検査前カウンセリング(名前や住所を聞かれることはない)
問診

採血(5cc程度の採血)→スクリーニング検査→結果・告知(1〜2週間後)

陽性の場合:確認検査→陽性→医療機関の紹介
陰性の場合:検査後カウンセリング

エイズの治療法は

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 現在のところ、エイズには根治させる治療法は確立されていませんが、エイズの発病を抑える薬(抗ウイルス薬や免疫力を高める薬)や治療法が研究されています。HIV感染が判明したら、医師の指示に従い、予防措置をしながら発病を先延ばしにしていくことができます。

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