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循環器疾患(心臓病・脳卒中)

ポイントは血管の老化を防ぐこと

 令和4年に心疾患で亡くなった方は23.3万人、脳血管疾患で亡くなった方は10.7万人となっています(厚生労働省「令和4年人口動態統計(確定数)の概況」より)。生活のなかには動脈硬化を起こすさまざまな危険因子が潜んでいます。

循環器疾患とはどんな病気なの?

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 体のすみずみまで酸素と栄養を行き届かせている動脈が、危険因子によって弾力性が失われて硬くなったり、血管内にさまざまな物質が沈着して血管が狭くなったり(狭窄)、詰ったり(閉塞)、あるいは血管壁が部分的にこぶのように拡張(動脈瘤)したり、血管全体が拡張したり(拡張症)、内膜に亀裂が入り中膜が裂けたり(解離)、破裂(出血)することにより、からだの組織や臓器に血行障害を起こす病気を総称して動脈硬化性疾患といいます。心筋梗塞や脳卒中などの循環器(系)疾患はその代表的な病気です。

こんな経過をたどり循環器疾患が起こる(ここに予防のヒントがある)

循環器疾患が起こる経過の図

危険因子とは

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 動脈硬化を引き起こす危険因子としては下表のようなものがあります。

動脈硬化の危険因子
生活を変えることにより修正可能なもの
肥満 喫煙 運動不足 ストレス
生活を変えることによりある程度修正可能だが遺伝的素因による場合は改善できないことがあるもの
インスリン抵抗性や糖尿病 脂質異常 高血圧
生活を変えても修正不可能なもの
高ホモシステイン血症(注1) 加齢 性差 家族歴(遺伝)

(注1)高ホモシステイン血症:液中のホモシステイン(アミノ酸)濃度の高値は動脈内壁を直接傷つけ、ドロドロのアテロームプラークが形成されやすく、さらに血液のかたまりも形成されやすくなる。

循環器病の死亡率

心疾患と脳血管疾患を合わせると、男性はがんに及びませんが、女性はがんを超えます。がん、心疾患、脳血管疾患は日本人の3大死因ですが、男女合わせると、50%近くになります。

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動脈硬化のタイプと動脈硬化性疾患

 危険因子により引き起こされる「動脈硬化」にはその起き方や起こる部位によりアテローム硬化、細動脈硬化、メンケルベルグ型硬化の3つのタイプに分類されます。また、それらの部位によって動脈硬化の疾患も異なります。

メタボリックシンドロームと動脈硬化の深い関係

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 動脈硬化は5つの危険因子の組み合わせにによって起こります。

  • 内臓脂肪蓄積
  • インスリン抵抗性→2型糖尿病
  • 高血圧症
  • 高中性脂肪血症
  • 低HDLコレステロール血症

 いずれも、心筋梗塞、脳卒中などの基礎病態であるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のチェック項目のすべてと合致します。

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虚血性心疾患の現状と予防

狭心症や心筋梗塞になる原因は

 心臓に酸素と栄養を供給している血管は、左に2本(左前下行枝と左回旋枝)、右に1本(右冠動脈)ある冠動脈です。これら冠動脈の動脈硬化が進み、血管が次第に狭くなると、需要と供給のバランスが崩れて血液が十分送られず、心臓が酸素不足の状態に陥ります。これを虚血性心疾患と呼び、狭心症と心筋梗塞がその代表的なものです。
 狭心症は運動などにより血液の供給が不充分になると胸痛発作を繰り返す病気で、酸素不足の状態が一時的で回復します。また、冠動脈の一時的なけいれん(痙攣)でも心臓は酸素不足となり、発作が起こります。
 それに対して、心筋梗塞は血栓などで冠動脈の一部が完全に詰まり血液が流れなくなって心筋が死んでしまう病気で、心臓に大きな障害が残ります。心不全により突然死を招くケースも少なくありません。
 虚血性心疾患の3大危険因子(リスクファクター)は、総コレステロール高値(脂質異常),高血圧,喫煙で、それぞれ単独でも虚血性心疾患のリスクファクターとして重要ですが、これらが重なるとその危険率は相乗的に高くなることが「フラミンガム研究」で認められています。

ライフスタイルを変える

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 食事やたばこ、運動などについてメタボリックシンドロームと判定された人は、その予備軍と同様な生活が求められます。

食生活
  • 動物性脂肪を控える。コレステロールを摂取量300mg/日以下にする。
  • エネルギー(カロリー)・食事量を抑え、肥満を解消する。
  • 体重はBMI(体格指数/体重(kg)÷身長(m)2)22程度を守る。
  • 減塩をして、高血圧を予防する。
たばこ
  • 禁煙:タバコの本数が多いほど虚血性心疾患に罹る危険が高い。1日20本未満でも、危険度が3〜4倍、20本以上で6〜7倍となるとの報告もある。
運動
  • 適度な運動:歩行、速歩、自転車等、全身を使った軽い運動が最適。天候や体調が悪い時、食後などは控える。狭心症発作がたびたび起こる時や心筋梗塞の発作直後は禁止する。

投薬療法と外科療法

投薬療法

 狭心症の治療薬は、発作時に使用する薬と発作を予防する薬に大きく分けられます。
 発作時は、即効性硝酸薬(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド)を用い、心臓の負担を軽減し、冠動脈を拡張します。
 発作を予防する薬には、利尿薬、強心薬、血管拡張薬などがあり、心臓負担の軽減、冠動脈の拡張、虚血への心筋の抵抗力アップ、心臓の酸素需要の減、降圧、血栓形成予防など、症状に応じて各種有り使い分けたり併用したりします。
 心筋梗塞急性期の主な治療薬としては胸痛を抑える鎮痛剤をはじめ、抗血栓薬、硝酸薬のほか、冠状動脈の拡張、心不全への進行予防、脂質異常(高脂血)抑制、降圧、血栓形成予防などを目的とした投薬が行われます。

外科療法

 外科療法としては、血行再建術や冠動脈バイパス術が行われます。
 血行再建術は、風船付き管(バルーンカテーテル)やステント(金属の筒状の網)を用い、動脈硬化で狭くなった冠動脈を拡げ血液の通りをよくする方法です。
 冠動脈バイパス術は、冠動脈の狭くなっている部分より下流の冠動脈と大動脈とをバイパス血管で結んだり、心臓の近くにある動脈の行き先を狭くなっている部分より下流の冠動脈へ付け替えたりする手術です。
 手術は、人工心肺を回して、大動脈を遮断し、心臓を停止させ冠動脈の血流を停止して行われてきました。

心臓病による死亡

 「令和4年人口動態統計」の『心疾患の男女別の死亡率』では、女性の死亡率が高く、『種類別』では心不全が多くなっています。また、年齢とともに死亡率は高くなっています。

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脳卒中の現状と予防

脳卒中とは

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 脳卒中は、3大生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病)のひとつとして、日本人の死亡原因の上位3位を占め、頭蓋内出血(脳出血、くも膜下出血)と脳梗塞とに分けられます。

頭蓋内出血

 脳血管が破れて出血を起こし、その出血によって脳が圧迫されてダメージを受ける病気です。頭蓋内出血は脳出血(脳内出血ともいう)とくも膜下出血に分けられます。

脳出血
脳の中の血管が何らかの原因で破れて、脳に直接出血した状態です。
くも膜下出血
脳の底面にある動脈の一部がこぶのように膨らんで動脈瘤となり、それが破裂して出血した状態です。
脳梗塞

 脳に繋がる血管に血栓(血の塊)などが詰まり、血液が供給されなくなることにより脳の細胞が死んでしまう病気で、心因性脳塞栓症と脳血栓症の2種類に分けられます。

 いずれも、高血圧、動脈硬化による血管の異常が引き金になって脳にダメージを与える病気で、発病すると脳の組織が破壊される危険が高く、命に関わる病気です。また、その発病は日常のライフスタイルとの関係が深く、その改善により予防ができることも少なくありません。

脳卒中の前兆(前触れ)

 前兆は原則としてなく、あるとしたらそれは軽い発作で、個人差があります。

こんな頭痛には気をつけましょう

 くも膜下出血の前に、前触れ頭痛と呼ばれる頭痛を感じる人がいますが、実はごく一部の人だけです。頭痛のほとんどは、脳に異常がなく、肩こり、顔の血管、蓄のう症(副鼻腔炎)、虫歯などによるものです。頭が「電気が流れるように」ぴりぴり、がんがん痛いといった症状は頭の皮膚の神経痛のことが多く、季節の変わり目などに起こります。また、偏頭痛(血管性頭痛)では血管の緊張、収縮のほか、血管の奇形のケースもあります。
 ただし、後頭部(首の付け根)に激しい痛みを感じる場合には首の血管が裂けて破裂したり、血管解離という恐ろしい病気の症状がありますし、くも膜下出血、脳腫瘍(しゅよう)、慢性硬膜下血腫など脳の病気のほかに、頸椎、目などの病気が原因で起きる病気がありますから、そのような状況があれば、頭痛専門医の診察を受けてください。

その他の症状

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 脳梗塞の場合は、「一過性脳虚血発作」が起きた際に、日ごろとは異なる違和感と症状が出ることがあるようです。例えば

  • ペンや箸を落とす
  • 言葉が出てこない
  • 片側の手足がしびれる、手が上がらない
  • ものが二重に見える、片方の目が見えにくい
  • パピプペポやラリルレロ(ぱ行、ら行)がはっきり発音できない
  • 目の前が暗くなる

 こういった症状が、数秒から数分あるいは1日程度で治まってしまうケースがあることが判断を難しくします。わずかな時間のうちに回復したために見逃されることが少なくありません。
 おかしいと思ったら、まず病院へ行きましょう。

脳卒中を防ぐには

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 脳卒中の危険因子は、性差と加齢を除き、ほとんどが修正可能なライフスタイルに関わることです。ですから、仮に健康診断で要経過観察と判定されても、大飲大食が常の人、高血圧やコレステロール値、中性脂肪値に心配がある人は食生活を大変革する、ふだんから歩くことや軽くてもよいので適度な運動する、睡眠時間を延ばす、ストレスを日々解消する、などを心がけ、生活習慣病にならないようにすることです。

脳卒中になったら

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 虚血性心臓病と同じく、脳卒中は時間との戦いです。発病してから3時間が生死の分かれ目といわれているように、すぐに専門病院にかかり、止血、再出血を防止する手当を行う必要があります。発症時には、迅速に対応しなければなりません。
 くも膜下出血や脳出血の場合は、四肢の麻痺や突き上げるような強烈な頭の痛みなどで異変を気づくでしょうが、ほとんどのケースではすぐに昏倒してしまうので家族が頼りです。一人住まいの場合は本人が救急車を呼ぶ余裕がないと考えたほうがよく、ごく親しい近隣の人、友人などを真っ先に呼ぶことで、救急車の手配ができて、一命を取り留める人もいます。
 脳梗塞の場合はある程度予兆があることが多いので、いつもと違う!という感覚を本人、家族とも研ぎ澄まし、「翌朝に医者へいこう」などという取り返しのつかない判断をしないようにしたいものです。「おかしいと思ったら、まず病院へ!」が肝要です。
 ある程度の年齢に達したら、救急の際の手配などを家族などと話し合っておく必要があります。

脳卒中の治療

 脳卒中の治療は、まず止血が行われ、再出血の危険を取り除く治療が行われます。
 その後、患部の部位や病状により、投薬療法、開頭手術に大別できる本格的な治療が行れます。

頭蓋内出血

 頭蓋内出血(脳出血、くも膜下出血)の治療はまず呼吸の確保と止血が行われ、再出血の危険を取り除く治療がなされます。

脳出血

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 治療はまず、呼吸の管理と再出血を防ぐための血圧の管理がなされます。出血で生じた血腫を除去する手術は重症度と出血の状況で判断されます。
 手術はこれまで開頭手術が行われてきましたが、最近は画像検査を行いながら頭部に小さな穴を開けて管で血腫を吸引する方法や、内視鏡による手術も行われるようになってきています。

くも膜下出血

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 くも膜下出血で開頭手術を行う場合は、開頭して患部の動脈瘤をクリップ(合金やチタン製)で根元から止めてしまうクリッピング術が施されるのが一般的です。また、クリッピング術のほかに動脈瘤内に極小のコイル(プラチナ製)を詰めて、脳血管から遮断し動脈瘤の破裂を防ぐ「脳動脈コイル塞栓術」も行われつつありますが、動脈瘤ができた場所と形状によって適応は変わるようです。
 脳(栄養)血管が走るくも膜下に広がった出血は、脳にダメージを及ぼすだけでなく、栄養血管にも変化を起こします。脳血管攣縮(れんしゅく)と呼ぶ血管が細くなる変化は脳の血液不足を起こし、脳梗塞などの重篤な状態に陥ることがあります。したがって、7〜14日間はICU(集中治療室)で厳密な管理のもとで治療が行われることになります。その間、多臓器不全を起こす可能性もありますから、食べ物を口にできず、栄養はすべて点滴で補給します。体もあまり動かしてはならず絶対安静状態が続くことになります。

脳梗塞

 治療法は、抗血栓療法(投薬療法)、外科療法(頚動脈内膜剥離術、動脈バイパス手術など)に大別できます。
  抗血栓療法には、血流を回復させる、あるいは血管が狭くなった部分に血小板が凝集し血管を閉塞させることを防ぐための抗血小板療法、抗凝固療法、血栓溶解療法があります。
 抗血小板薬には、アスピリンをはじめ6〜7種類あります。抗凝固薬は血栓ができるところを阻止するクスリで、脳塞栓症の再発予防にまず第一に選択されます。そして完成した血栓自体を溶解するためには血栓溶解薬が使用されます。いずれにしても、専門医が薬剤の副作用もにらみながら、慎重に投薬されます。

脳卒中の男女別・種類別の死亡率

 脳血管疾患の死亡率は40歳以降に上昇します。うち種類別では、脳梗塞が男女とも50%以上と断然高く、次いで脳内出血、くも膜下出血の順。男女別ではやはり、女性がわずかに高くなっています。突然死がいちばん多いくも膜下出血でも、女性が高くなっています。

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大事なリハビリテーションの役割

リハビリテーションは3期の経過で

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 生活習慣病、とりわけ脳卒中、心臓・がん手術の術後などではからだの機能を回復、維持するための医学的リハビリテーションが必要なことが少なくありません。
 脳卒中を例にとると、急性期、回復期、維持期の経過をたどって行われます。
 急性期リハビリテーションは治療開始後まもなく再出血の恐れが少なくなると、手足などの機能が失われることを防ぐためとセルフケアの早期自立を目指し、おもにベッドサイドで始まります。リハビリテーションは早ければ早いほどその後の経過がよいとされています。
 回復期リハビリテーションは主治医またはリハビリテーション科医が診断の上、できるだけ早期に最大の機能回復を目指して、集中的に行います。
 維持期リハビリテーションは獲得した機能をできるだけ長期に維持するために実施されます。

リハビリテーションはチーム医療

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 リハビリテーションのチーム医療はリハビリテーション科医の機能評価、目標設定、疾病管理、リスク管理、リハビリテーション治療計画、リハビリテーション処方に基づき、理学療法士(脚)、作業療法士(手)、言語聴覚士(言葉、聴覚、えん下)、リハビリテーション病棟看護師、医療ソーシャルワーカー、義肢装具士などがそれぞれの専門性を発揮し、できるだけ速やかに患者さんの最大の能力を引き出すべく行われます。

リハビリテーションと医療保険・介護保険

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 医療保険でリハビリテーションをかかれる期間には上限があります。脳卒中が180日、他の手術や治療後が90日、本項とは関係ありませんが、靱帯損傷・骨折・脊髄損傷はそれぞれ60日・90日・150日になっています。おおむね、急性期から回復期が対象になります。
 期間終了後の通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションは介護保険でかかれるケースがあります。
 詳しい相談は、病院の医療ソーシャルワーカーや介護保険のケアマネージャーに相談します。

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