2025.11.10
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過去の病ではない
結核の現状
 過去の病と思われがちな結核ですが、結核は、今でも年間10,000人以上の新しい患者が発生し、1,400人以上が命を落としている危険性の高い感染症です。結核の現状や病気の概要、予防についてみてみましょう。
結核の歴史と現状
 明治時代後期から昭和20年代前半にかけて、日本では結核がまん延し、「国民病」「不治の病」などと呼ばれていました。当時の日本では工業が盛んになり都市に人口が集中したことで、劣悪な労働環境や衛生環境が結核の感染拡大につながったといわれています。結核予防法が誕生した昭和26年の新規結核登録患者数は年間約590,000人で、約93,000人の方が亡くなりました。全国の病床の約4割は結核病床でした。
 現在の感染症法の前身である結核予防法が制定され、国家としての本格的な結核対策が開始されました。医療の向上や公衆衛生の改善、予防接種の効果などで、その後、罹患率も死亡率も順調に低下していきます(グラフ1)。
 現状はどうでしょうか。厚生労働省の集計結果によると、2024年に新たに結核として登録された患者数は10,051人で、1,461人の方が亡くなっています。患者数は前年よりも45人(0.4%)減少、死亡数は126人(0.8%)減少していますが、結核は現在も日本の主要な感染症として位置付けられています。
グラフ1 結核の罹患率と死亡率の推移

<公益財団法人 結核予防会 結核研究所 疫学研究センター「結核罹患数・罹患率」より> 
https://jata-ekigaku.jp/

<厚生労働省「2024年 結核登録者情報調査年報集計結果」より>
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001547187.pdf

年齢階級別・地域別に見る結核感染の傾向
 年齢階級による患者数の構成をみると、70歳代の人が60%以上を占めています。特に80歳代の人は28.4%と最も高い割合となっていますが、20歳代の人も12.8%と比較的高い割合を示しています(グラフ2)。20歳代の人の患者数が多いのは、外国で生まれて罹患した患者が多いためです。
 地域別に罹患率(人口10万対)をみると最も高いのは大阪府(12.8)で、最も低い山形県(4.1)の約3倍となっています。

結核罹患率(人口10万対)の高い地域と低い地域(2024年)
<高い地域> 大阪府12.8、徳島県12.3、大分県10.7、岐阜県10.2、和歌山県10.2
<低い地域> 山形県4.1、長野県4.2、山梨県4.4、新潟県4.9、北海道5.3

グラフ2 年齢階級による罹患数の構成比(2024年)

<厚生労働省「2024年 結核登録者情報調査年報集計結果」より>
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001547187.pdf

結核の原因・感染経路・症状
 結核の原因は、結核菌という細菌に感染することです。結核を発病した人が咳やくしゃみをしたときの結核菌を含んだ飛沫を、他人が吸い込むことで感染します(飛沫感染)。

<主な症状>
 結核菌は主に肺の内部で増えるため、咳、痰、発熱、呼吸困難など、風邪のような症状がみられます。
 肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります。小さな子どもや高齢者は症状が現れにくく、症状が全身に拡がって重篤な状態になりやすいため注意が必要です。
●潜伏期間 半年~2年
 咳、痰、微熱など、ときとして血痰、食欲低下、体重減少などがみられます。
●病状の進行
 治療せずに病状が進むと、呼吸困難に陥ることがあります。また、骨や腸管、腎臓など肺以外の臓器にも病巣ができることがあります。

結核にかかったときのリスク
 予防のポイントは、予防接種・咳エチケット・定期健診です。

<予防接種(BCGワクチン)>
 生後1歳までのBCGワクチン接種により、小児の結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度罹患リスクを減らすことができると報告されています。生後5か月~8か月の期間に1回の接種が標準的な接種スケジュールです。
<咳エチケット>
 咳やくしゃみが出始めたら、マスクを着用して他の人にうつさないようにしましょう。
<定期健診>
 成人を迎えたら、結核に限らずさまざまな疾患を早期発見するためにも、胸部エックス線検査を1年に1回受けることが大切です。胸部エックス線検査は、感染症法により、学校、職場、自治体などが行う定期健診の必須項目になっています。

海外渡航するときは注意!
 日本は罹患率8.1の結核低まん延国ですが、近隣のアジア諸国には罹患率が高い国もあります。結核は飛沫感染するため、必要であれば渡航前にBCG接種を検討しましょう。

<厚生労働省「2024年 結核登録者情報調査年報集計結果」より>

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001547187.pdf

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