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【自然災害と家①】地震・水害(地すべり)・風害と家

このところ、大きな地震や台風や火山の噴火など色々な災害のニュースを聞きます。あるいは実際に災害に遭われた方もいらっしゃるかもしれません。今回はそんな自然災害を「建築」の観点でみていきます。
人間は自然災害に打ち勝つ「家」をずっと考えてきましたが、完璧なものは未だにありません。自然の営みの前では、人間は非常に無力です。それでも技術を駆使して対策を講じてきました。第1回は地震・水害(地すべり)・風害について、その対策を掲載します。

国と個人の両方で対策

自然災害対策として国が建築基準を設けて対応しているものもあります。
反面、地震の起こりうる国でも、しっかりした建築基準がないことがあります。レンガ積みの家は「雨・風・狼」は防ぐことができますが、少し大きな地震でも倒壊します。鉄筋やコンクリートを使えば良いのですが、それでは庶民は家を持てないことになるからです。幸いわが国では地震に対しては対策が取られていて、世界水準の中ではトップレベルのものになっています。しかし、その基準も違う形の地震が起こるたびに、基準が改定されているというのが実情です。国の対策でカバーしきれない部分については、個々での備えが必要となります。

1.地 震
2.水害(地すべり)
3.風 害

1.地 震

過去の震災の例

○東日本大震災

震源 : 宮城県仙台市の東方沖70Km、深さは24Km
地震の規模 : マグニチュード9.0で観測史上最大
最大震度 : 震度7(宮城県栗原市)
死者・不明者 : 全国で約1万8千人。岩手県・宮城県・福島県においては約1万6千人。

地震というと2011年3月11日の東日本大震災が記憶に新しいですが、太平洋の中で起きた地震は10mを超える津波を起こして陸地に押し寄せて甚大な被害をもたらしました。ただ、その2日前、三陸沖地震がマグニチュード7.3の規模で起きており、この時の津波は55cmでした。この地震が3.11の大地震に繋がったと言う説が有力です。
死者・不明者の多くは津波による水死が最も多く9割を占めます。その内、60歳以上の人が6割を超えています。一方、建造物の倒壊など地震の揺れそのものが原因による犠牲者は、東京を含め分かっているだけで90人程度でした。地震による直接の被害よりも津波の被害が大きかったことがわかります。

◆マグニチュードと震度
地震の大きさは「マグニチュード」で表されますが、これは震源の地中でのことです。一方「震度」は住んでいる場所における揺れの大きさを表しています。
○関東大震災(1923年9月1日)

震源 : 神奈川県相模原湾の北西沖80Km、深さは23Km
地震の規模 : マグニチュード7.9
最大震度 : 震度7
死者・不明者 : 全国で約10万5千人。ほとんどは神奈川県と東京都。

昼食の支度中の時間帯に起こったため、火災が多くの場所で発生して、亡くなった人の9割は焼死でした。特に陸軍本所被服廠跡地(現、墨田区横綱町公園)で起きた火災旋風はそこに避難してきた人たちの命を奪い、2日間鎮火せずに燃え続けました。 その教訓から、「地震が起きたら先ず火を消す」ということは常識化しているように思えますが、若い人たちはいかがでしょうか? ガスに関しては地震の際に自動的に遮断するメーターが使われているので少し安心です。なお、この日を忘れないために9月1日は「防災の日」と定められました。

国の建築基準

住宅の地震対策は、平成11年に制定された「住宅の品質確保の促進法」から始まります。そのなかで「耐震等級」が定められており、1から3まで大きくなるにしたがって強度が増します。

耐震等級
耐震等級1数百年に一度発生する大地震(震度6強から震度7程度)の地震力に対して倒壊、崩壊しない強度 ※住んでいる人の生命はある程度保証されるが、建物はひびが入ったり、場合によっては多少傾くことはある。ただし、震度5強では損傷しない。
耐震等級2等級1×1.25程度
耐震等級3等級1×1.5程度
◆地震と建築基準法
建築基準法の上から耐震基準を振り返ると以下のようになります。自分の家が建てられた年代が旧基準に当てはまる場合は耐震診断を行って、耐震補強することも可能です。市区町村には助成金の制度がありますので、建築担当課に相談してみましょう。
・昭和25年大正12年に起こった関東大震災を踏まえて耐震強度が設定された。(旧基準)
・昭和56年十勝沖地震などの見直しにより、新耐震基準が制定された。(新耐震)
※これ以前の建物は耐震診断をして補強の必要な場合があります。
・平成12年阪神淡路の震災(直下型)や耐震偽装問題を課題として改定
※木造の基礎に鉄筋を入れる、建物の浮き上がりを押さえる金具が必要などが改正されました。
2.水害(地すべり)

近年の水害の特徴

○地すべり

山崩れは長雨などによる気象により起きますが、近年山の手入れがおろそかになったり、無理な宅地開発などで被害が起きることが増えてきました。都市部では、アスファルト舗装などにより雨水が浸透せずに全て下水道に流れ込むため調整池の必要が出てきています。

○台風

台風などで床上浸水などの被害は各地で伝えられていますが、「土石流」という言葉が近年良く聞かれます。水と土砂、場合によっては岩や木なども含まれて押し寄せてきますので、建物は倒壊することが多いでしょう。


国・自治体の取り組み

アスファルト舗装も浸透性のものにしたり、歩道もインターロッキングブロック(舗装ブロック)などに改良して少しでも効率的に地面に水を戻すための手段が講じられています。
自治体ではハザードマップが用意されていることが多く、軟弱地盤や水害で浸水した地域を表示しています。それらは河川の改修や下水道の改良などを加えて改善されつつありますが、自分の住んでいる地域の状況は必ず把握しておきましょう。


◆宅地開発と水害
宅地開発などの場合、斜面を削ったり盛土をしたりすることに規制があります。擁壁の構造では特に地面に浸透した水を擁壁の内側に貯めないように水抜き穴を設けることが重要になります。ブロックや石積み、コンクリートの場合でも同じく水を抜くことが必要です。土の場合は直接擁壁に掛かる圧力は分散されるのですが、水が貯まってしまうとその圧力(水圧)が100%擁壁に掛かり崩したり、転倒させたりすることになります。

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3.風 害

風害の特徴

気候変動のため、風害も増えています。台風やハリケーン、竜巻などがこれに当たります。
異常気象、いわゆる「地球温暖化」の原因としてCO2(炭酸ガス)の増加が挙げられています。CO2は車の排気ガス、工場の重油ボイラー、石炭の燃焼によるもの以外に、噴火や山火事(野焼き)なども重要な要因となっています。

風害と建築基準法

日本には古くから、屋敷林と呼ばれる防風林や防雪林がありました。市街地では直接強風を受けることは少ないのですが、田畑の真ん中にある農家などは風を直接受けるので木を植えることによって風を防いでいました。現在は、家を建てる際には建築基準法に風害対策が組み込まれています。
それぞれの地域で風の強さが違うので、地域ごとに基準風速を決めてその風速に耐えうるように建物を建てることが規定されています。建築上、筋交いを計算するときには、地震の力以外に風の力も計算してその大きいほうの数値で筋交いの必要量を決めるようになっています。高く幅の広い建物ほど、地震力※よりも風圧力のほうが大きくなることが多いようです。※地震力の決め方はその階の床面積に一定の係数を掛けて計算します。

地域の風速基準
46m/秒沖縄県全域、鹿児島県名瀬市
40m/秒高知県室戸市
38m/秒千葉県銚子市
34〜36m/秒他の地域はほとんどこの範囲である。ちなみに東京23区、大阪市は34m/秒

※台風の上陸進路である太平洋側が高くなっている。日本海側は上陸後の台風なので風速も弱まっているため比較的低い数値で規定されている。例えば、石川県、富山県は30m/秒である。

個別対策

最近は、台風以外にも竜巻などの被害が日本でも見られるようになってきました。竜巻の場合は単純な横風でなく、上に引っ張られるような力が働くので、屋根等がはがされることが起きます。このような被害が増え続けると風速規定の見直しが必要になるかもしれません。
横風の場合でも壁に当たった風は上に逃げるので、屋根の軒裏に当たって被害を及ぼします。また、切妻のような傾斜の屋根面も横風が通ることで上向きの引っ張る力が働き、屋根に被害をもたらします。瓦屋根の場合は、瓦が重いのでとめずに置いてあるだけが多く、地震でずれたり、強風で飛ぶこともあるので要注意です。一番上の棟瓦は銅線等で下地の板に結束されていますが、ずれていないか注意してみましょう。

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