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【元気な暮らし】認知症を防ぐ食事

 日本の認知症の患者数は増え続けています。その大きな理由は社会の高齢化とされていますが、生活スタイルの変化があるとも言われています。例えば食生活の変化、自動車の普及による運動不足、核家族化による会話の減少などがあります。今や認知症は誰でもなる可能性がある病気なのです。

食事で予防できる認知症もある

認知症は、食事で予防することが出来る病気でもあります(全てではありません)。認知症にはいくつかの種類がありますが、脳血管型の認知症(脳出血や脳梗塞が原因の場合)、つまり生活習慣病に由来する認知症には食事による方法が有効です。「食事の在り方が関与している生活習慣」も明らかになってきておりますので、そうした生活習慣病予防が認知症の発症を食い止めることにも繋がります。

1.生活習慣病の予防と改善が大切
2.何を食べれば良い?
3.食事以外で認知症の予防に役立つこと

1.生活習慣病の予防と改善が大切

生活習慣病が認知症のリスクを高める

糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症:コレステロール値が高い、中性脂肪値が高いなど)等の病気は認知症の発症リスクを高めてしまいます。
これらを持病として持っている場合は、食生活の改善と病院での治療が欠かせません。生活習慣病は「痛い」「苦しい」といった解りやすい症状がほとんどないので、放置している人や薬だけに頼る人が多いのも事実です。
しかし、食生活を改善して、血糖値や血圧、コレステロールや中性脂肪、なによりも体重を適切な範囲に近づけていくことがとても重要です。もちろん病名がついていなくても、血液検査で「値が高め」と言われている人も要注意です。

体重を適切な範囲に納めておこう

体重がオーバーしていると、それだけで血圧は上がります。同時に気がつかないうちに血糖値やコレステロール値などが高くなっていることが往々にしてあるのです。この2つの値を正常範囲に収めておくことは、認知症予防にとても重要なポイントです。
適切な体重は、一定の年齢になると自分ではわかりにくくなります。これは中年太りがあるからです。しかし、一説によると中年太りは70歳〜80歳を元気に乗り越えるための体の貯金ともいわれています。ちょっと太めのほうが長生きということが明らかになっているからです。
そんなときの目安になるのが「20歳のときの体重プラス10キロの範囲ならOK」という考えです。20歳の時の体重というのは1つのたとえであって、正確には「何も気にせずに飲んだり食べたりしても体がスマートで元気で健康であった時の体重」という意味。その時の体重を思い出して、そこから10キロの増加は年齢に伴う自然な増加と考えて良いでしょう。もちろん、血液検査の結果が正常の範囲であることは大切です。
その10キロを越してしまうと、血糖値やコレステロール値が知らぬ間に上がって「生活習慣病予備軍」になってしまう、あるいは病名がつくほど悪くなっていることがあります。
また、体重が重いと腰や膝にも負担がかかります。すると腰痛や膝の痛みを起こしやすく、かばってしまいます。そうなると認知症予防に必要な「日常でも活発に活動する」といったことがやりづらくなります。歩くことが億劫にならないようにならないためにも体重は増え過ぎないことが重要です。

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2.何を食べれば良い?

体重を抑えつつ、血液検査の結果を良くするには
〜食物繊維の効果

食物繊維には水溶性と不溶性
食物繊維は2種類あります。水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」です。水溶性食物繊維は海藻類や納豆、こんにゃく、枝豆、ごぼう、かぼちゃなどに含まれています。市販の食物繊維入りドリンクにもこの水溶性食物繊維が使われています。血糖値や血圧が気になる人向けのトクホ(特定保健用食品)の飲料類にも多く使用されているので、日常で取り込みやすくなっています。
一方、不溶性食物繊維は野菜、きのこ類、雑穀類、納豆、根菜類、大豆など豆類、こんにゃくなどに豊富です。重なって紹介されている食品は両方が含まれています。
 不溶性食物繊維は歯ごたえのある固い食感なので、つい避けてしまいがちです。野菜や果物を使ってジューサーでジュースを作ると絞りかすが出ます。このカスとして捨てられるのが不溶性食物繊維なのです。ですから、手作りで野菜ジュースやスムージーを作るときはミキサーで作ると丸ごと繊維がとれるので効率が良くなります。

この問題を一気に解決する栄養成分があります。それが食物繊維です。食物繊維はカロリーがほとんどありませんので体重が増える原因になりません。しかも血糖値の上昇を緩やかにするために高血糖になりにくくしてくれます。さらには余分なコレステロールを体の外に出す効果もあるのです。便秘の予防・改善にも役立つので、便として体に好ましくない物質や栄養をとりこんだあとの食べもののカスを速やかに排出してくれます。
さらに、なんといっても重要なのが「固いので自然とシッカリと噛む回数が増える」ということです。噛む回数が増えると脳に刺激がいくので、ストレスの解消やある程度の量で食事に満腹感をもたらします。噛むことによって、やけ食いや食べ過ぎを防ぐ事が出来ます。また噛む回数が増えると唾液が良く出ます。唾液には殺菌作用があるために虫歯や歯周病予防に役立ちます。虫歯や歯周病になると自分の歯を失って差し歯や入れ歯の原因になります。自分の歯でシッカリ噛むことで脳が活性化し、自分の歯を20本以上維持することが認知症予防にも役立つのです。

魚を食べたほうが良いというけれど…

脳神経をはじめ、神経組織には脂肪(脂質)を多く含んでいます。肥満の原因である内臓脂肪や皮下脂肪との違いは、この2つが主に飽和脂肪酸で出来ているのに対して、神経組織の脂肪は多価不飽和脂肪酸が多いということです。この多価不飽和脂肪酸のなかでもn-3(あるいはω-3:オメガ)系脂肪酸、特にDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が多い特徴があります。
 特に注目したい成分はDHAです。DHAとEPAは食品から取り込むことができますが、DHAはEPAを原料に体内で合成されます。DHAは脳の発達期や成人の脳の機能性維持に必要な脂肪酸。脳そのものや神経組織の発育・機能維持、保護作用に不可欠です。記憶や学習機能の向上にも役立ちます。不足すると情報伝達がスムーズでなくなり、学習能力や記憶力に悪影響を与えてしまいます。
 このほかDHAには脳卒中や認知症、血栓、心筋梗塞、高血圧、脂質代謝異常症(高脂血症)を予防し、コレステロールや中性脂肪を下げる働きがあるのです。
 DHAとEPAが魚に豊富であるために、魚を食べた頻度と認知症の発症率を調べた4つの研究があります。それらをまとめると、魚を全く食べなかった人に比べて魚を食べる回数が増えるほど認知症のタイプを問わずに全体として発症頻度が下がっていることが明らかになりました。特にアルツハイマー型の認知症では魚を食べる頻度が高い人ほど発症リスクが下がっています。
しかし、これらの研究では魚を食べる頻度が週に5回までのものなのです。日本の高齢者の魚の平均摂取量は1日あたり平均88グラムです。魚の切り身の平均的な重さは約80グラムなので、1日1回は魚を食べていると仮定することができます。つまり、日本の高齢者は週に7回程度魚を食べていることになり、研究よりも多く食べています。ですから、今以上に魚を食べることによって認知症が予防できるかどうかは判断がついていないのが現状なのです。もちろん魚の摂取が少ない人は不足を起こさないように「週5回は食べておきたい」ということは忘れないでいましょう。

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3.食事以外で認知症の予防に役立つこと

食事は「食べる」だけでなく「作る」ことも有効

 料理は、手足の動きと脳のなかでの作業が複雑に絡み合っている行為です。料理は初心者には簡単なメニューでも難題に感じられるものですが、これが大きな刺激になります。料理に慣れた人なら、これまで作ったことがない新しいメニューに挑戦することで脳への刺激が大きくなります。
料理をするということは「冷蔵庫の中身を確認する」、「新たに買い足す食材をチェックする」「買いに行く」「食材を洗う・切りそろえる」「調理する」「味見をする」「ゴミを捨てる」「調理場・調理道具を清潔にする」「調理器具などをしまう」などの一連の作業を順序だてて行っていきます。
特に冷蔵庫の中身のチェックは脳を刺激して記憶能力の衰えにブレーキをかけます。冷蔵庫、冷凍庫どちらも、意識して記憶しておかなければすぐに内容を忘れてしまうもの。買いおきがあるのに新たに買い足してしまった、あると思っていた食材がなかった、消費・賞味期限が切れていた、など情報が絡み合っています。
献立を考えながら冷蔵庫の中に必要な食品があるのかないのか、買い足す食品は何なのかと考えるのは毎日覚えることが変わってくるので脳トレにぴったり。保存している食品の鮮度や消費期限を考えながら献立を考えるのもお勧めです。
食事作りは同時進行で何品も作り、平行して調理器具を片付けていく作業をします。頭の中でいくつもの作業手順を瞬時に計画立てて考えるのも記憶力を鍛えます。
料理に限らず、片付けというのは「掃除する場所を確認する(散らかりや汚れ具合をチェックする)」、「どの場所を」、「どこから始める」、「何を捨てるか、残しておくか」、「どこに捨てるか、しまうか」、「掃除(洗浄)の方法はどれにするか」など、同時に様々な思考と作業を行います。

サプリメントは効果なし

認知症予防には単一の成分で全てがまかなえるような栄養成分はありません。DHAなど脳機能に関わる栄養素を複合的に配合したサプリメントがありますが、いくつもの栄養素が含まれていても、脳機能への働きかけの効果は認められていません。サプリメントで補えきれないほどの栄養素や成分が絡み合っているのです。
ビタミン類も同様です。紹介したビタミン類は体に溜め込めないものがほとんど。1日に必要以上な量をとっても尿として出て行ってしまいます。しかもサプリメントで摂取した栄養成分が食品として取り込んだ場合と体内で同じ効率で働くかどうかは疑問視されています。食品として食べるのが一番です。

必ず禁煙

喫煙は発がんだけでなく認知症を引き起こす大きなリスクです。喫煙している人は「喫煙がストレス解消になる」「禁煙することがストレスになる」と言うことがあります。しかし、それらはタバコ会社が作り出した販売促進のためのイメージ戦略。タバコの害を小さく見せるとともに、喫煙者にタバコよりもストレスのほうが体に悪いと思わせ、そのストレスを解消するためにタバコが必要だと信じさせる巧妙なワナなのです。これを機にスッパリやめましょう。

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菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。



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