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【元気な暮らし】油を使いこなして若返ろう

 油は健康にとって良くも悪くも大きな影響を与える食品です。そこで注目されるのが、その種類です。体にとって良い油、悪い油が話題になっていますが、できるだけ健康に良い油を多く取り入れ、悪い油は避けたいものです。そこで病気を寄せつけないような油とのつきあい方をご紹介します。

適度にとれば油は健康の味方

最近では健康やダイエットのために油を絶対に摂らないという人は少なくなったようですが、それでも「油」というと、どうしても「高カロリー」「肥る」といったイメージが払しょくできないのは、まだまだ油に関する知識が浸透していないということでしょう。ここでは健康のために油を摂取するという観点で油を考えてみましょう。

1.油は悪者ではない
2.見える油と見えない油がある
3.油にはどんな種類がある?
4.話題の油の上手な摂り方

1.油は悪者ではない

油が持つさまざまな働き

油は太る、コレステロール値を上げると悪者にされがちです。もちろん食べ過ぎると肥満や生活習慣病の原因になります。
しかし、脂肪は生きていく上で欠かせない成分です。体に一定の脂肪が蓄えられていないと、脳出血を起こしやすくなったり、血管が弱くなることもあります。このほか体のエネルギー源になるだけでなく、血液やホルモンの材料にもなり、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ベータカロテン、ビタミンD、ビタミンE)の吸収を助けます。

細胞の若返りを促進

脂肪の最も重要な働きは、体の細胞の1つひとつを丈夫にして若々しくすることです。私たちの体はおよそ60兆個の細胞があります。細胞は体をつくる最も小さな単位です。その細胞を守っている細胞膜の原料が脂肪なのです。細胞膜がいきいきと若くてしなやかであれば、心身の生命力や免疫力が高まり、病気になりにくい体になります。

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2.見える油と見えない油がある

見えない油にも注目を

揚げ物につかう揚げ油、炒め物に使う油など料理に油が「見える油」です。パンにぬるバターやサラダにかけるドレッシングなども「見える油」です。
では、「見えない油」とはどういうものでしょうか?これはもともと食べ物に含まれている油のことです。たとえば肉の霜降りの脂身や「脂ののった魚」と表現される青魚やトロなどに多く含まれる脂です。ほかには牛乳やケーキの生クリームには乳脂肪が含まれています。しかし一見して油が浮いているわけでもなく、脂肪を食べていると感じにくいのが「見えない油」なのです。
1日の脂肪の摂取量のうち、見える油は全体の約20%、見えない油は約80%です。ですから、健康的に油脂を使うなら料理に使う油だけでなく、食品として食べる脂にも関心を持っていたいですね。

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3.脂肪にはどんな種類がある?

「油」と「脂」

 「あぶら」には「油」と「脂」の2つの漢字があります。この違いは、油は常温で液体のもの、脂は固体(白く固まっている状態)のものをさします。ですが、どちらか片方が健康に良くて、もう一方が悪いというわけではありません。どちらの「あぶら」でも、含まれている成分によって効果が違うからです。
ちょっと難しくなりますが、脂肪(油脂)は脂肪酸の集合体です。その脂肪酸の結合の仕方で系列が分かれて働きが変わってきます。
図 あぶらの種類

注目したいオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸

不飽和脂肪酸に注目

 油脂が健康に重要な役割であることは、全身の細胞膜の材料であるからです。細胞膜は、体内にある細胞1つひとつを包み込んでいるのですから、細胞膜が丈夫でなければ健康ではいられません。細胞膜が弱いと酸素や栄養を細胞に取り込みにくく、脳の認知機能や免疫能力が低下しやすくなります。
 それほど重要な細胞膜に対してオメガ3脂肪酸は細胞膜を柔軟にし、オメガ6脂肪酸は細胞膜を丈夫にし、強くします。この2つの成分がバランス良く食事から入ってくることで体を細胞レベルで若々しくしてくれるのです。

油脂の特徴を活かして健康に役立てるために注目したいのが不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸のなかで、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸は体の構造に不可欠な成分であるにも関わらず、体内で合成することができません。つまり、食事を通して口から取り込むしかないのです。

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4.話題の油の上手な摂り方

油の種類とバランス

家庭で活躍する料理用の油はサラダ油やキャノーラ油、ごま油といったオメガ6脂肪酸に偏っています。現代人はオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランスが約1対10となっており、バランスが良いとはいえません。
使用料が多すぎるといっても、オメガ6脂肪酸は体に必要な成分です。その役割はコレステロールや血圧を下げる、動脈硬化を予防する、血液をサラサラにするなどがあります。このため高コレステロール血症を抱えている人や肉や加工品、バターをよく食べる人にはおすすめです。

リノール酸はなぜ人気?

「脂身のあるステーキを食べても、サフラワー(ベニバナ)油の入ったドレッシングをかけたサラダを一緒に食べれば大丈夫」、「毎朝のパンをバターの代わりにサフラワー油のマーガリンを食べれば健康に良い」「炒め油をサフラワー油にする」などということがいわれるようになり、その主成分のオメガ6脂肪酸であるリノール酸が大人気となりました。
ところがせっせとリノール酸を食べ続けた結果「リノール酸とりすぎ症候群」がでてきたのです。リノール酸を食べ過ぎて、肥満、アレルギー、血栓(血管中に血液の塊ができてしまうこと)、心臓疾患などの症状がでてきたのです。

オメガ3脂肪酸を有効に摂取

オメガ3脂肪酸を含む製品

 最近はアマニ油やエゴマ油そのものだけでなく、これらの油を使ったドレッシングも登場してきました。この2つの油は熱に弱いので、炒め油にするには向いていません。加熱しない状態で食べるドレッシングや料理の仕上げに少しかける程度が最もおすすめです。
 特に肉食が多い人は魚、特に青魚といわれるあじ、いわし、さば、さんま、ぶりなどを多く食べるようにするとDHAやEPAとしてオメガ3脂肪酸の摂取が増えます。すると自然にオメガ6脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸の取り過ぎを防いでくれます。

これらの症状を改善するには、食べ過ぎたオメガ6脂肪酸を減らし、足りないオメガ3脂肪酸を増やすことです。オメガ3脂肪酸とは、アマニ油やエゴマ油、魚の脂であるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などです。取り過ぎたオメガ6脂肪酸をこれらの油に置き換えることが最も有効といえます。

飽和脂肪酸はほどほどに

飽和脂肪酸は主に肉の脂身に多く含まれています。脂身とは、ステーキ肉についている白い塊になっている部分だけでなく、しゃぶしゃぶ用肉のような薄切り肉にもついている白い部分です。サシと呼ばれる霜降りの部分や挽肉にも多く含まれています。脂身は肉にうまみを溶かし込んでいるために、非常においしく感じるものです。そのため必要以上に食べ過ぎてしまう欠点があります。ほかにはバターやショートニングにも豊富です。この2つはケーキ類やクッキーなどにたくさん使われています。
飽和脂肪酸は血管をしなやかにし、コレステロールの材料にもなります。コレステロールは多すぎると問題ですが、一定量は体にないと健康に長寿を迎えられないことがわかっています。
しかし、現代の食生活では飽和脂肪酸が簡単にたくさん口に入ってしまう状態です。飽和脂肪酸は、レトルト食品やインスタント食品、スナック菓子、チョコレートに多く含まれています。食べすぎないように注意をしたいものです。

飽長寿食のオリーブ油

オリーブ油はオメガ9脂肪酸(不飽和脂肪酸の一つ)の代表であり、長寿食の1つとして挙げられています。オリーブ油の主成分であるオレイン酸は動脈硬化や心筋梗塞、狭心症などを予防します。ほかにも便秘を予防、改善をする働きがあります。この便秘解消が腸内環境を良くする効果をもたらします。 腸は全身の免疫の約7割を支えています。腸内環境が良くなれば免疫力がアップし、病気を寄せつけない体になるのです。
しかも腸は食べた食品の終着地点。便として、栄養を吸収したあとの食べカスや体にとって好ましくない物質や不要物を便として排出する場所です。ですから便をだすことは健康にとって重要なことなのです。

ちょっと気になるトランス脂肪酸

トランス脂肪酸とは自然界にも存在する物質です。しかし、問題になっているのは油脂を加工・精製する工程でできるトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸には悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす作用があります。日常的にトランス脂肪酸を多く摂りすぎている場合、少ない場合と比較して心臓病のリスクを高めることが示されています。
トランス脂肪酸は、常温で液体の植物油などに「水素添加」をするによって出来てしまいます。なぜ水素添加をするかというと、液体の油を固形化することで工業的に食品を作りやすくするためです。ですから液体の油を固形化したマーガリン、ショートニング、それらを使った原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツ、クッキーなどの洋菓子、フライドポテト、クロワッサン、ソフトクリームなどにトランス脂肪酸が含まれています。
平均的な日本人の食生活ではトランス脂肪酸の摂取量は少なくいとされています。ですから、トランス脂肪酸に気をとられるよりは、脂肪全体の取り過ぎに注意することのほうが健康を維持するために重要なのです。

コレステロールゼロの油

最近「コレステロールゼロ」と大きく表示されている油が多く販売されています。しかし、これらの油はすべて植物油。つまり、もともとコレステロールがゼロの食品なのです。コレステロールを多く含んでいるあぶらは「脂」と表現される、肉の白い部分やラーメンスープなどに浮かんでいる脂なのです。もともと含まれていない成分をわざわざ大げさに表示してあるだけなのです。
  コレステロールがゼロだといっても脂肪であるには変わりはありません。安心すると食べ過ぎてしまう傾向が高いのが油です。
現代の食生活では「控えめ」程度でちょうど良い量になることを憶えておきましょう。
菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。



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