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【元気な暮らし】砂糖のはなし

 身近な調味料である砂糖ですが、様々な種類が出回っています。健康に気遣って、上白糖(白い砂糖)ではなく、ほかの種類の砂糖を愛用している人も多いはず。様々な砂糖の特徴を知って、上手に使いこなしていきましょう。

黒くても白くても砂糖は砂糖

 上白糖以外ならば健康に良いのか、「砂糖不使用」ならば健康に良いのか。砂糖の摂取を嫌う人は少なくないようですが、栄養面を気にするほどの摂取量ならば、そのことのほうが問題です。また人口甘味料には以外な落とし穴があることも忘れてはなりません。

1.砂糖の役割
2.白砂糖と黒砂糖
3.「砂糖不使用」は健康に良いのか
4.砂糖は質よりも量に注意

1.砂糖の役割

貴重なエネルギー源

砂糖のような糖分はエネルギー源であり、血糖値(血液中の糖分の量)の維持など生きる上で欠かせません。こうした情報は生まつき持っているので、甘い味は安全で好きな味だと無意識に感じているのです。つまり、甘い味は本能的に好きな味なのです。
しかも、甘い味は脳にとって「ごほうびの味」になりやすいのです。これは、甘い味を本能的に「好ましい味」と感じることに加えて、脳が甘い味を食べた時に糖分がもつ甘さを脳が「おいしい」と判断し、幸福感を感じさせるからです。

疲労回復に即効性

みなさんは「疲れたときには甘いお菓子が効く」と感じることはありませんか? 実際に砂糖を使った甘い味のもの、つまり糖分は吸収が早く、疲労回復に即効性があります。糖分が脳の栄養として行き渡ると、頭が冴えます。頭がシャキッとすると、疲れが消えたような気持ちになるのです。

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2.白砂糖と黒砂糖

黒砂糖のほうが健康に良い?

砂糖といえば、一般的には上白糖をさします。砂糖は日常性格に欠かせない調味料なので、スーパーのセールで値引き商品の目玉にすると来客が増える商品だそうです。
上白糖は精製された食品です。しかし、「精製された食品は健康に良くない」といったように考える人が増えてきました。例えば、精白米よりも精製されていない玄米のほうが栄養成分が豊富という理由で人気が高まっています。それと同様に「精製されている上白糖よりも精製されていない茶色い砂糖のほうが健康に良い」と考える人が増えてきました。
そこで、白砂糖を精製する前の黒砂糖と比べて、どの程度健康に良いのかを調べてみましょう。

黒砂糖は糖質少な目、ミネラル・ビタミン多め

白砂糖と黒砂糖の栄養的違いを比較するには「日本食品標準成分表(通称 食品成分表)」(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告)で調べます。この食品成分表は日本で流通している食品のほとんどについて100gあたりについて含まれる栄養成分と含有量が網羅されている辞書のようなものです。
これに、上白糖と黒砂糖のデータが収録されていますので、栄養的な違いを正確に比較することができます。精製された上白糖は100gあたりの炭水化物量が99.2gで、ほぼ100%糖質です。比べて黒砂糖の炭水化物量は89.7%で、上白糖に比べて糖質が少なくなっています。
その分何が増えているのかというと、主立ったものはカリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などのミネラル類とビタミンB1、B2、ナイアシン、B6、パントテン酸、ビオチンといったビタミン類です。 この違いに着目して「精製された白砂糖に比べて精製度の低い黒砂糖のほうが健康に良い」といように解釈されているようです。

1日の摂取量を考えると栄養上の差はない

しかし、砂糖は1日にご飯や麺類のように400〜450グラムなどとたくさん食べるものではありません。2016年に世界保健機構(WHO)は、「砂糖などの糖類の摂取量」を、1日に摂取するカロリーの5%未満に抑えるべきだという新しいガイドラインを発表しています。1日に摂取するカロリーの5%未満というのは、平均的な成人で25g程度。
上記の違いはあくまで100g単位の話です。1日に使うであろう黒砂糖の分量からミネラルを補給すると考えるには含まれる量が少なすぎです。つまり、ビタミンやミネラルを摂るのなら、1日に350グラム程度を食べることを目標にしている野菜や果物、海藻類などを食べる方がずっと効率が良いのです。
つまり、上白糖と黒砂糖の違いは「感じる甘みの違い」「色合いの違い」しか差がないと考えて良いでしょう。

無意識に摂取している白砂糖

上白糖の白さを漂白剤で白くしていると考えている人もありますが、これは勘違いです。精製していくうえで不純物が除かれていくために白くなるだけです。これもお米の例と同じく、精製すると白くなっていくのです。
白砂糖と黒砂糖を比べると、料理の仕上がりに色の違いがでてきます。白砂糖は料理の出来上がりに影響を与えませんが、黒砂糖は、黒い色がそのまま反映されてしまいます。このため、煮物などを黒砂糖で作ると濃い色合いに仕上がります。通常のバターロールは中身が白いのに、黒砂糖パンは全体が茶色になっているのが、この現象です。
そこで気をつけたいことがあります。家庭で黒砂糖を使っていても、市販のケーキなどの洋菓子、まんじゅうなどの和菓子、持ち帰り総菜の調味料などは色合いと味を考慮して白砂糖を使っています。これは、白砂糖はあっさりとした甘み、黒砂糖は、後味までこってりとした甘みを持っているからです。結局、家庭で黒砂糖を使って健康に気遣っているつもりでも、菓子店で買ったお菓子類や持ち帰り総菜には白砂糖を使っているので、無意識に食べているのです。

三温糖は白砂糖と変わらない

ほかに”より自然に近い”として人気の砂糖が三温糖です。茶色の外見をしていますが、上白糖のように料理に使いやすい砂糖です。しかし、この三温糖の茶色は黒砂糖のような精製していないためについている色ではありません。
三温糖は、上白糖やグラニュー糖(上白糖よりも精製度が高い砂糖。溶けやすいためにコーヒー・紅茶類に向いている)を精製したあとの糖蜜を再利用し、砂糖として結晶させているものです。この結晶させる度に再三再四、糖蜜を加熱していることが「三温」という名の由来になっています。
三温糖は数度の加熱によりカラメル成分が出来るために特有の茶色に色づいているのです。カラメル成分とは砂糖を焦がしたようなもので、プリンの茶色の部分の色の素となっているものです。また、一部の製品では上白糖にカラメルを添加したものも用いられています。ですから、三温糖の茶色は、精製度が低いために茶色であるのではなく、あとから加熱したために茶色く色づいているものなのです。そのため、「上白糖に比べてミネラル分が豊富」と信じられていますが、精製度は上白糖と変わりません。食品成分表で調べても含まれる栄養成分は、上白糖が糖質99.2%、三温糖が98.7%とほとんど違いがないのです。この2つはビタミン・ミネラル類をほとんど含まず、成分的にはほぼ同じものです。色違い、と考えても良いでしょう。

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3.「砂糖不使用」は健康に良いのか

砂糖の代替品

ところで、「砂糖不使用」と表記してある甘いお菓子や缶コーヒーなどはどうなっているのでしょう?
砂糖が使われていないのに甘い理由には2つのパターンがあります。1つは「ぶどう糖果糖液糖」るいは「果糖ぶどう糖液糖」という異性化糖※と呼ばれる天然甘味料を使用している場合と、もう1つは人工甘味料を使用している場合です。
異性化糖の成分は果物や野菜に多く含まれる果糖が中心です。この果糖はご飯や砂糖から得られる糖分に比べて満腹感があまり感じられない特徴があります。そこで、清涼飲料水などで一気に大量の果糖を取っても満腹にならないことが起きてしまいます。気づかないうちに、たくさんの糖分を飲んでいるのです。取りすぎた異性化糖は肥満だけでなく血中の中性脂肪を上げすぎてしまうこともあるので要注意です。
※異性化糖は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)を主成分とする液状糖です。

果糖と人工甘味料の違い

本来、果物や野菜などに含まれる自然な果糖は、同時に含まれる食物繊維などの作用でゆっくり吸収されます。しかも一緒にビタミン・ミネラル類を豊富に得ることができるため、健康に貢献します。果物の1日の目安はリンゴなら1/2個、みかんやキウイなら1個程度です。

甘いドリンクをよく飲む人ほどお菓子をよく食べる
大変興味深い調査研究があります。
日本の女子大生約4,000人を対象に、最近1か月の食事内容を細かく調べ、その中に出てきた甘いドリンクの摂取量と食事内容の関連を調べたものです。
この調査の結果によると、甘いドリンクを飲む量が多い人ほど、脂肪の多い食品やお菓子を食べる量も多くなることがわかっています。ちなみに、この調査では、ソフトドリンクに関して、従来の砂糖を使用した商品と人工甘味料を使用した商品を区別していません。
つまり、ソフトドリンクのカロリーにかかわらず、飲む量が多い人ほど、脂肪の多い食品やお菓子を食べる量が多くて、太りやすい食生活を送っている結果となったのです。
では、糖分を含んだソフトドリンクは、どの程度の量なら飲んでも健康に問題はないのでしょうか?
各種の研究からわかっているのは、「1日1回以上か、そうでないか」が太るかどうかの分かれ目だということ。つまり、2日に1回までが限度です。しかも、日本では1缶250〜350ミリリットル、ペットボトルは1本500ミリリットルが平均ですが、研究では1回250ミリリットルで行なっています。1回に1缶というよりは、より少ないコップ1杯程度だということです。
このことから、コーヒーならインスタントでも自分で作って砂糖を使って量を調節したほうが太りにくく、清涼飲料水も果汁100%のジュースに変えたほうが多すぎる甘味に恐れる必要がなくなってきます。

一方で、日本とアメリカで認可されている人工甘味料は、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、ネオテームの5つです。人工甘味料を使用している場合は、カロリーがゼロなどのメリットがある反面、思わぬ落とし穴があります。それは、脳が甘い味を感じることによって、体内に糖分が入ってきたと間違えて判断してしまうことです。すると血糖値が上がりすぎないように、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを出してしまいます。すると実際に糖分は体に入ってこないのですから血糖値が下がりすぎて空腹感がでるのです。しかもインスリンは別名肥満ホルモンとも呼ばれ、体に脂肪を溜め込むように働いてしまうのです。

人工甘味料の中毒性

人工甘味料を使ってカロリーをセーブしたつもりが、かえってお腹がすいて本当の糖分が欲しくなってたまらなくなるのは上記のようなメカニズムがあったからです。この空腹感は脳からの指令なので、意思の力とは関係なく逆らえません。すると、本当の砂糖を使ったお菓子や異性化糖を使用したドリンクなどが欲しくなってしまうのです。このことから人工甘味料は、本当に砂糖を使ったケーキを食べる時のコーヒーに使うといったサポート役に徹しさせたほうが良いといえます。
「砂糖不使用」とあっても、異性化糖が使用されている、あるいは人工甘味料が使用さえていれば飲食する量には注意が必要です。

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4.砂糖は質よりも量に注意

砂糖に変わりはない

黒砂糖、三温糖など各種の砂糖は上白糖とは違う種類ではありますが、砂糖であることには変わりがありません。つまりどれも砂糖なのでカロリーは同じです。健康に良いと考えても使用している量や食べる量が多過ぎれば肥満や生活習慣病の原因となります。砂糖をスプーンではかる、スティックシュガーを使うというように、自分で使う量を把握しておくのが賢い使い方です。

砂糖の栄養分よりも気にかけたいこと

最後に、砂糖の種類にこだわって健康を守ろうとしても、マヨネーズなどを多く使ったり、油の多い食事をしているのは片手落ちです。
砂糖の種類にだけ目を奪われて脂肪の量やお菓子の摂取量、食事全体の量を気にかけないでいると肥満をはじめ生活習慣病の原因になることにはかわりがないのです。
菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。



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