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【元気な暮らし】血管の若さを保つ

血管は全身に血液を送る経路です。血液は酸素と各種栄養を運び、老廃物を排出するために血管を通って循環しています。このため、全身の老化は血管の老化からはじまるという説があるほどです。

やはり基本は食事

血管を若々しくするには有酸素運動(ウォーキングなど)の運動で新しく筋肉を作ることが有効とされています。 しかし年齢を重ねるにつれて体を動かすことが減ってきます。若い頃は仕事や家事、育児に忙しかったのが、外回りの仕事が減る、子どもが自立していくなどで、運動量は減り、さらに高齢になると運動だけで改善するのは難しくなります。そこで、食事によるサポートが必要になります。

1.血管の老化とリスク
2.野菜多め、タンパク質もしっかり
3.生活習慣病を治す

1.血管の老化とリスク

血管の老化

若々しい血管は新しいゴムホースのようで、中もしっかりと空洞でしなやかです。一方弱っている血管は、古くてくたびれたゴムホースのように硬くてもろくなっています。しかも血液がドロドロであったり、血管内が詰まって狭くなってしまっている場合もあるのです。若い20歳代は血管の太さが大きく、血液が通る通路としての血管の空間の部分も広くなっています。しかし、40歳を越えるあたりから血管の内膜の厚みが増してきて、空間部分が狭くなってきます。男性は45歳以上、女性は55歳以上になると動脈硬化のリスクが高くなってきます。この時期から改めて食習慣をはじめとする生活習慣を見直す必要があるのですが、この年齢を超えていても、思い立った時に改めていけば、リスクを小さくしていくことが可能なのです。

老化に伴うリスク

血管の老化は生活習慣病の原因になるようなリスクがあると加速されていきます。血圧が高い、血糖値が高い、中性脂肪が高い、LDLコレステロールが高い、HDLコレステロールが低いといった状態です。しかもこれらをいくつも重ね持っていることで血管がますます弱ってしまいます。
まず、血圧が高いと血管が痛みやすくなります。血管に負荷がかかって破れやすくなるからです。高血圧治療ガイドライン2019によると、75歳未満の人なら収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、75歳以上なら収縮期血圧150mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上が危険とされています。

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2.野菜多め、タンパク質もしっかり

おかずの品数は減らさない

まず、運動量が減っていることを自覚して、若い頃と同じような食事をしないことが重要です。若い頃とは20歳代前半をさし、その頃より全体的に量を減らしていくことがポイントです。全体的というのはご飯などの主食やおかずなどの量を減らすだけであっておかずの品数は減らさないことが重要です。1品減らすのではなく、量だけ減らすのです。減らすポイントは、ご飯がどんぶりや大盛り、お替わりをしていれば、通常のお茶碗1杯程度にし、脂肪を多くとってしまいがちな揚げ物の回数を減らすなど、体に脂肪をため込みやすい食品やメニューを減らしていきます。揚げ物は月に1〜2回程度までに留めたほうがよいでしょう。

野菜を多めに

逆に増やしたいのが生活習慣病を防ぐ効果のある野菜類です。生活習慣病を予防する効果のある野菜の量は、1日の分量として生の状態で両手3杯(きのこ・海藻類を含む)で、そのうち1杯は緑黄色野菜とするのが目安です。加熱した場合は野菜に含まれる水分が飛ばされてしまうので、1日の分量として片手3杯、うち、緑黄色野菜が1杯が目安です。

タンパク質は大事

血管は筋肉で作られているので、その材料はタンパク質です。主菜になる肉や魚、卵などタンパク質源を欠かさず食べることは非常に重要です。ところで、注意したいのが豆腐です。豆腐はタンパク質源になりますが、水分が多いのでカロリーが低くダイエット効果はありますが、実際に食べた量の割にタンパク質量が少ないのです。血管を丈夫にするための摂取タンパク質量は研究途上で正確な数値は出ていませんが、不足を起こさないことが重要とされています。そして、魚と肉の割合をコントロールすることと、野菜の摂取を多くすることで、血液をサラサラにし、血管の詰まりが破裂して心筋梗塞や脳梗塞などを起こすことを防ぐことができるのです。

魚と肉は1:2

食べる割合に注意したいのが魚と肉を食べる比率です。65歳ぐらいまでは魚2:肉1、66歳以降からは、魚1:肉2の割合にしていくのが血管の若さを保つのに効果的です。ここでは65歳を区切りにしていますが、20歳の頃の体重に比べてプラス10kgの範囲であれば※、65歳の区切りでOKです。
魚は特に青魚と呼ばれるあじ、いわし、さんま、ぶりなどがおすすめです。これらの魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)がたっぷり含まれています。これらの成分が血液をサラサラにする効果があるために、狭くなった血管でも血流を良くしてくれます。しかもDHAにはLDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを高める働きをもっています。さらに中性脂肪の合成を押さえ、血圧を下げる効果があるのです。まさに血管の老化に対抗する素晴らしい栄養成分なので、青魚の割合を高くしていくことで血管の老化に対抗することができます。
※10kg以上体重がオーバーしていれば、生活習慣病の黄色信号なので、ダイエットが必要になってきます。この場合はは、魚2:肉1の割合を続けます。そして、運動や食事量を見直すことで体重を落として、プラス10kgの範囲に収まれば、魚1:肉2の割合で食事をしましょう。

適度な脂肪は必要

脂肪はダイエットをはじめ何かと悪者にされがちですが、血管を丈夫にするには必須の栄養素なのです。脂肪は細胞膜・血液・ホルモンなどの材料になり、ビタミンA・D・Eなどの脂溶性ビタミンの吸収を助け、血管や皮膚のしなやかさを保つのに欠かせません。食べ過ぎは肥満などの弊害をもたらしますが、一定の量は健康維持に必要です。

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3.生活習慣病を治す

血管の若さを保つには、老化を進める原因を排除していくことが重要です。それは、まさに生活習慣病を治すための食事でもあります。

血圧が高い人の食事〜まずは減塩

血圧を正常化させるためにはダイエットなどで体重をコントロールするほか、減塩が必要です。手始めとして、減塩調味料を使うと手軽に減塩ができます。しかしながら、従来の調味料でうす味にするのが望ましいのです。そもそも高級和食や料亭の味はだしをきかせて素材の味を引き出しているのでうす味です。「だしをきかせて高級に作っている」と考えるようにしてはどうでしょうか。わさびやしょうが、にんにく、みょうが、こしょうなどの薬味を使う、ポン酢などの酸味で味付けをする、といった工夫でうす味でも美味しく食べられることができます。外食や持ち帰り総菜を食べた時に「ちょっと味が濃いな」と感じられるところまでうす味に慣れれば大成功です。
味は「慣れ」の習慣が大きく左右し、4〜7日程度から慣れはじめてきます。地域によっては10時や3時のおやつの時間に漬け物など塩味の強いものを食べる習慣がありますが、そのときに出された漬け物や味が濃い甘くないような料理には手を出さないという、自分なりの新しい習慣をつくることも必要です。
野菜はゆでない

塩分(ナトリウム)を排出させる働きを持つカリウムは生野菜に多く含まれますが、ゆでるとゆで汁に溶けてしまい約半分になります。サラダなど生野菜を食べることがおすすめです。葉物の野菜は水洗後にラップで包んでレンジで加熱すると火が通りますので、お湯でゆでずに済みます。そのまま水を張ったボールに投入して冷ますとニオイも気になりません。そのほかトマトジュース、バナナ、メロンもカリウムが豊富です。

中性脂肪高めの人の食事〜炭水化物を控える

中性脂肪が高めであると血管を詰まらせる成分が増加します。中性脂肪が血管壁にへばりついて蓄積されていくのです。「動脈硬化症疾患予防ガイドライン2012年版」によるとトリグリセリド(中性脂肪)が150mg/dl以上が要注意です。中性脂肪はご飯や麺類などの炭水化物の食べ過ぎや果物の食べすぎでも増えてしまいます。
ご飯は1日お茶碗3杯程度が目安です。どんぶりとミニうどん、あるいはうどんとミニ丼とのセットなどは炭水化物の重ね食べになるために体重オーバーのほか、中性脂肪を押し上げてしまいます。また、ご飯はお皿に盛りつけるとお茶碗1杯程度の量では少なく感じてしまいます。大きめの丼に入っていても少なく感じてしまいます。お茶碗1杯のごはんの量は、男性用で約160g、女性用で約140gです。しかし外食などのカレーになると300g程度もりつけて一人前になっています。小盛りでも200g程度は皿に入っていないと物足りないのです。外食の牛丼などの大きめの丼も同様で、通常でも200g程度は入っています。家庭で食べる時は、ごはんを一旦お茶碗に入れて、その分のご飯をお皿に盛りつけるようにしましょう。外食では小盛りやご飯少なめでオーダーするようにしましょう。
なお、中性脂肪は有酸素運動(ウォーキングなど)で正常化しやすい性質をもっています。なるだけ生活習慣に歩くことを加えるようにすると良いでしょう。
果物は控えめに

果物やお菓子の食べ過ぎは中性脂肪を上げてしまうので、量の調節が大切です。果物の1日の目安量は両手の親指とひとさし指で輪を作ったぐらいの量です。例えばりんご1/2個やぶどう1/2房、桃1個などです。

コレステロールが高い人の食事〜青魚と食物繊維を摂取

LDLコレステロールが高い場合は、コレステロールが血管の壁に入り込んで蓄積していき、やがて「プラーク」と呼ばれるこぶになり、血管の詰まりができます。こうして血管の内壁が狭くなり、血栓も作られ、ますます詰まりやすい血管になってしまうのです。そこでLDLコレステロールを正常化させるには、肉を食べる割合を減らし魚、特に青魚(あじ、いわし、さんま、ぶりなど)を多めにしましょう。
食物繊維は余分なコレステロールを体外に排出させる効果があるので、根菜類や、きのこ・海藻類を食べましょう。また野菜を豊富に食べることで、血管のさびつきを防ぐことができます。野菜は緑色やオレンジ色、白色、黄色など様々な色をもっています。この色を演出しているのが各種ポリフェノール類です。これが体の酸化(さびつき)にブレーキをかけてくれます。特におすすめは緑黄色野菜で、ポリフェノール類のほか、各種ビタミン類が豊富で抗酸化物質が豊富です。しかしポリフェノール類は体に貯め込むことができない成分なので、毎日しっかりと野菜を食べるようにしましょう。

血糖値が高い人の食事〜食事量を抑える

血糖値が高い状態が続くと血管内で酸化が始まり、血液中のコレステロールも酸化させます。酸化したコレステロールは、より血管の壁に張りつきやすくなるため、プラークが形成されやすくなってしまいます。さらに余分な血糖があると血管内のタンパク質と結びついて変成させ、糖化という血管のコゲつきのような現象をおこし、血管のしなやかさを失わせてしまうと考えられています。血糖値を正常化させていくには、まず食事を腹八分目にすることです。食事の全体量をこれまでの8割程度にセーブし、「もう一口食べたいな」と感じるところで食事を終了させます。これで摂取エネルギーが正常化していくのでダイエット効果もあります。
そして、野菜をたっぷり食べることが重要です。野菜や海草・きのこ類には食物繊維が豊富で、食物繊維には、血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。野菜に含まれる食物繊維は固い筋のようなものです。筋が多い、あるいは固い食品は食物繊維が多く含まれています。斜め薄切りなどにして繊維を断ちきるように切る、あるいはしっかりと加熱すると柔らかくなり食べやすくなります。

食物繊維は空腹にも強い味方

食物繊維を多く含む食品は固いために自然に噛む回数が増えます。すると満腹感がしっかりと得られるようなるのです。そのことを利用して、料理の食べ順に注目していきましょう。 まず食事の食べ始めに野菜を食べるのです。空腹感が強い食べ始めに低カロリーでかみ応えのある野菜料理を食べましょう。食欲を落ち着かせて、早食いをセーブすることができます。そしておかず類を食べ、最後にご飯類で食事の量をコントロールしていきます。ご飯は玄米や玄米ご飯、麦ご飯、雑穀類のはいったご飯などに変えるのもおすすめです。これらは、通常食べている精白米に比べて食物繊維が豊富です。穀類から得られる食物繊維は生活習慣病全般を防ぐ効果があることがはっきりしているので、これを機に導入してみるのもおすすめです。

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菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。



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