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【健康を考える】特定保健用食品② トクホ最前線

特定保健用食品とそうではない食品が並んでいたら、あなたはどちらを買うでしょうか。トクホは値段が高めだし、気まぐれで1回ぐらい摂取したところで効き目は期待できないと、一般の食品を選ぶ人や、トクホマークを目にしたとたん無条件にトクホを選択する人、関心の程度は人それぞれです。それでも、コーラやノンアルコールビールにまでトクホが登場する昨今、知識をもっていて損はないでしょう。

どんなに新しいトクホが登場しても基本は食生活

少し気を付けてみてみると、食品売り場には以外にもトクホが多いことがわかります。中には普通の食品を食べることに気後れを感じてしまう人がいるかもしれません。それでも基本は食生活です。食事をきちんと摂る努力したうえで、なお不足分がある人はトクホを検討してみましょう。

1.炭酸系飲料のトクホ
2.ダブルトクホの誕生
3.トクホは食品の良さを引き出したもの
4.大豆イソフラボンとトクホ
5.ノンアルコール飲料のトクホの誕生
6.基本は日頃の食生活

1.炭酸系飲料のトクホ

コーラが健康に良い?

このところ、コーラやサイダーといった炭酸系飲料にも「脂肪の吸収を抑える」などの効果をうたった特定保健用食品(トクホ)が登場し、人気を博しています。それは、カロリーゼロ(またはカロリーオフ)※であると同時にダイエット対策商品でもあるからです。従来の炭酸系飲料は「美味しいけれど、健康に良くない」「太りやすい」などと敬遠されがちであった消費者の不安を払拭しています。これら商品に共通する成分は難消化性デキストリンで、食物繊維の一種です。これは、カロリーはほとんどなく、脂肪の吸収を抑えるなど様々な効果を担っています。つまり、難消化性デキストリンを加えていることでトクホ認可を得ているのです。難消化性デキストリンが使用されているかどうかは、商品の原材料表記で確認することができます。
※多くはカロリーゼロまたはカロリーオフ商品ですが、なかには通常カロリーのものもあります。

トクホコーラで痩せる?

そこで注意したいことが2点あります。
まず1つめはトクホ商品は思いついたときに1回飲む程度では効果は期待できません。1回あるいは1日に飲食する量を商品表示の通りを守ることと、最低約3か月程度は毎日連続使用をしないと効果がでてこないことです。このため、カロリーゼロやカロリーオフタイプでないと通常の炭酸飲料並の糖分を毎日取ってしまい、逆にカロリーオーバーや体重オーバーになってしまいます。
2つめは、カロリーの低いタイプの飲料には、人工甘味料が使われています。使用されている人工甘味料は、国内で使用が認可され、一定の安全性が確認されている範囲で利用されています。このため過剰に不安になることはありませんが「使用されている」ことは知っておいておいた方が良いでしょう。
このほか、炭酸飲料系トクホのCMのキャッチコピーにある「脂肪の吸収を抑える」というのは、詳しくみると「血中の食後中性脂肪値の上昇を抑える」となっていることがあります。つまり、脂肪の吸収を抑える=食べた脂肪が消えて無くなる、というわけではないので要注意です。

自分の目的とは合わないことも

このような情報は、商品にあるパッケージを見るだけでは理解しづらい場合があります。きちんと確認しておかないと、自分の目的と的外れなトクホを使ってしてしまうことになってしまいます。商品ラベルを読んでもわかりにくい場合が少なくありません。「脂肪を消費させてダイエットをしたい」人が「中性脂肪が気になる人向け」のトクホを利用していて、結果として体重の減少を狙っていた人が血中の中性脂肪のケア商品を使っていたとう自らの意図とずれてしまう現象がおきてしまいます。必ず利用したい商品のウェブサイト等で「効果」について解説してある部分しっかりとチェックしましょう。

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2.ダブルトクホの誕生

1つの商品で2つの健康効果

これまでのトクホは、1商品につき1つの健康効果を持つものばかりでした。しかし、2014年頃から、1つの商品で2つの健康効果が期待できる、いわゆる「ダブルトクホ」の商品が登場してきました。主にお茶飲料にみられ、特徴としてここでも難消化性デキストリンという成分がトクホ認可取得のための大きなカギとなっています。

難消化性デキストリンの効果

もともと「ダブル効果」としていますが、添加されている難消化性デキストリンそのものには複数の健康効果があります。
難消化性デキストリンの健康効果は、血糖値の急激な上昇を抑える、便通を改善する効果、余分なコレステロールを排出する働き、中性脂肪の吸収を抑えるなどがあります。このため、難消化性デキストリンを含む商品をトクホ商品として開発・認可を受けようとすれば、工夫次第で効果を3つにでもできるのです。ところが、ここで問題が出てきます。

体内に取り込める量には限界が

複数の健康効果を設定するうえでの問題、それは体内に取り込むことができる量との関係です。現在、ダブルトクホの製品はお茶飲料が中心です。このためにほぼカロリーゼロで余分なカロリーを取ることなく、トクホとして「食品としての良さを保ちながら目的とする健康の増進がはかれる」ということが期待できます。しかし、現状のダブルトクホの商品ラインナップでは、結局は「難消化性デキストリンの量をどれだけ体内に取り込む事ができるか」ということが決め手になっています。
実際に表記されている健康効果を引き出すには「商品に表記を指定してある量を守る」ということが必須になります。しかもトクホは認可にあたっては、審査をするデータを得るために「毎日連続して、指定量を3か月程度飲食する」という前提があるので「毎日続けられるような1日の回数・量」「飲んで好きな味(まずいと感じていれば続けにくくなります)」「予算(トクホ商品は、非トクホ商品に比べて数十円高額)」を勘案しなければなりません。従って、“トリプルトクホ”といった商品を開発しても、消費者には受け入れられない可能性が大きくなってしまうのです。

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3.トクホは商品の良さを引き出したもの

多量を安全に摂取できる

トクホ商品には各社が着目し研究成果をあげた成分を豊富に含んでいる商品が特徴です。ここで注目したいのは、あくまでトクホ商品は食品であるということです。なので、トクホの認可を得られるような一定の健康効果を出す成分は、食品に存在する成分であることです。これまで人間が食品として何百年も食べ続けていた食品の中に存在して食べ続けていた成分ですから、一定の安全性があります。ほとんどの成分は、微量に含まれていたものが、研究によって、特定の健康効果が大きいことが判明してきたものです。このため、トクホ商品になることで一度に多量に摂取できるように加工されていることがほとんどです。認可にあたっては安全性が検討され、1日の目安量が設定されています
決して医薬品のように、自然界には存在しないような科学的な成分を含んでいるわけではありません。そのため、即効性は期待できませんが、大きな副作用が起こりにくく、トクホのベースとなっている「食品そのものの本来の良さ」を維持できているのです。
※食品表示にある「摂取するうえでの注意事項」は必ずチェックしておくと安心です。

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4.大豆イソフラボンとトクホ

過剰摂取に注意

例外的にトクホ商品のなかで、少し注意をしたいものがあります。それは「大豆イソフラボン」を多く含む商品です。大豆イソフラボンは、体内で女性ホルモンと似たような働きをするために閉経後の女性に摂取が勧められています。大豆イソフラボンは更年期の不調の予防や改善、骨粗しょう症やがん予防の効果があります。このため、トクホ食品やサプリメントで手軽に摂取できると健康の維持増進に大いに役立ってくれます。
しかし、食品安全委員会新開発食品専門調査会では、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」において、特定保健用食品としての、大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値を30mg(大豆イソフラボンアグリコン換算)としています。過剰摂取の場合、胃腸障害や乳がんなどの副作用が心配されています。 商品パッケージに、1個あたりの含有量が表示されてあるので、数値をチェックしたうえで上限値を超えないようにしましょう。

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5.ノンアルコール飲料のトクホの登場

未成年の飲酒につながらないよう配慮が必要

2014年の9に、ノンアルコール飲料2品についてトクホ表示が認められました。前述の「難消化性デキストリンの働きで糖分の吸収を穏やかにする」タイプと「茶カテキンを豊富に含み、エネルギーとして脂肪を消費しやすくする」タイプです。難消化性デキストリンと茶カテキンの成分はすでにトクホ認可に際して効果が認められている成分です。
ノンアルコール飲料は、味やパッケージが既存のアルコール飲料に近いために、店頭でも酒類と共に並べられているように「未成年が飲酒をはじめになるきっかけになる可能性」が考慮されています。このため「未成年者に悪影響が出ない配慮が必要」としながらも、ノンアルコール飲料は、アルコールを含まないのであるのですから、ビール風味の清涼飲料水としての位置づけとなっています。そのためにこのような認可判断があったと見られています。発売時期などは未定ですが、新しい晩酌の仕方が産まれるかもしれません。従来のビールの代わりにノンアルコールビールに切り替えや節酒などのきっかけになると期待されていますが、あくまで成人向けです。

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6.基本は日ごろの食生活

トクホ商品には必ず明記

トクホ商品にはバランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言の表示が義務づけられています。しかも、この表示は、消費者が商品選択をする際の情報提供とするため、容器包装の全面に表示することとされています。このため、どのトクホ商品にも「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と指定されている文言が記載されています。
このことからも、「トクホの機能性に頼ることなく、基本は日頃の食生活が重要」ということが明確にされています。トクホはあくまで「日々の健康を増進させるための食生活をサポートする」という食品です。なので「これを飲んでおけば血糖値が上がらない」「これを噛んでおけば虫歯にならない」といった使い方は間違っています。またトクホの効果を過信して飲食をし過ぎてしまい、って太ってしまったという例も少なくありません。
基本の食生活で欠かせないのは1日3食を必ず食べることです。休日になるとだらけて朝昼兼用になるようなこともあるかもしれません。しかし、特に朝食は、1日の活力源であり、体内時計をリセットさせて健康増進には欠かせないのです。
メニューと食べ方に工夫を
食事の内容については厚生労働省・農林水産省が策定した「食事バランスガイド」が参考になります。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/gaido-kihon.pdf
1日に必要な主食、主菜、副菜など量をコマ状に図示してバランスのとれた食生活がおくられるような手助けをしてくれます。基本は一汁三菜のようなイメージでいると解りやすいです。
自分に見合った必要量は、年齢や性別にあわせて皿数(おかずなどの量や品数)でしめされているので判断やすくなっています。実際に自分が食べている食事内容と提示されている食事の量との過不足を比較してみると、今の食生活の偏りが明らかになる利点もあります。
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/zissen_navi/yun/sheet.html

このほか、回転食という食べ方があります。これは、同じような食品やメニューを連続して食べるのではなく、毎食異なった料理や食品を食べ、食事のバラエティーの幅を広げようというものです。例えば、主菜であれば、今日は肉を食べたから次は魚、その次は卵、というように重ならないようにして、食べる食品をぐるぐると回転させていくのが「回転食」の食べ方です。さらに調理方法も変えていくのがコツです。例えば魚介類なら魚の種類を変えるほかに、焼き魚→煮魚→刺身→鍋物や汁物の具材→フライなどというように調理方法が重ならないようにして、食品の種類と調理方法を回転させていくのです。野菜類は重なりやすいですが、野菜同士の組み合わせや魚と同様に炒める、サラダ、煮るなど料理方法を変えるようにしましょう。家庭で料理する場合、野菜類は1種類につき2〜3日のうちに食べきり、2日程度ほど間をおいて再購入するようにすると重なりにくくなります。食べる食品数のバラエティーを豊富にすることで、各食品の持つ「優れている部分」と「不足しがちな部分」を相互に補完し合って栄養のバランスがとれるのです。
過去に「1日30食品を食べましょう」とありましたが、実際にそれだけの食品数を食べようとすると食べ過ぎになりがちです。20〜25品を目標にしてみましょう。

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菊池真由子(管理栄養士 健康運動指導士 NR・サプリメントアドバイザー)
大阪大学保健センター、フィットネスクラブ、国立循環器病センター集団検診部を経て、インターネットなどで病気の予備軍の人達への栄養指導を専門に20年あまり従事。特にダイエット、生活習慣病、メタボ対策、健康づくりなどを中心に行う。サプリメントの専門家としても幅広く活動し、マスコミ取材も多数。
著書に『免疫力を上げるコツ』『免疫力を高めるとっておきメニュー』『がん予防に役立つ食事・運動・生活習慣』『40歳からの健康ダイエット』『花粉症からあなたを守る食事学』『あなたと家族を守る がんになりにくい、再発しにくい 食事と生活習慣』など。



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