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【元気な暮らし】高齢者は特に肺炎に注意

かぜが悪化すると「肺炎」になる、と考えていませんか?
または、「肺炎」は高齢者や体の弱った人が罹るものだから、自分には無関係のものだと思っていませんか?
肺炎患者の罹患状況は、国の予防対策もあり、2015年をピークに減少傾向にあります。

症状がほとんど出ない「肺炎」も。肺炎は予防が大事

1.「肺炎」とは
2.高齢化で増えた肺炎
3.肺炎の症状とは
4.肺炎の診断と治療
5.肺炎は予防が大事

1.「肺炎」とは

肺炎は肺に炎症が起きる病気

肺炎は単にかぜをこじらせたものではありません。 かぜは鼻や喉、気管支が炎症を起こす症状の総称で、肺炎は肺が細菌やウイルスに侵された状態をいいます。
肺は気道での防御機能を経て常に無菌状態を保ちつつ、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を出す「ガス交換」という大切な仕事を行っている器官です。その肺が炎症を起こし十分な働きができなくなるため、重篤になることも少なくないあなどれない病気です。

さまざまな原因で、抵抗力が弱っていると罹りやすい

肺に炎症を起こす原因にはさまざまなものがあります。肺炎球菌、ブドウ球菌といった細菌、インフルエンザウイルスや、はしかウイルスなどのウイルス、マイコプラズマのように、細菌とウイルスの中間のような存在の微生物などです。
これら無数の細菌やウイルスは私たちの周りには常に浮遊しており、呼吸をするときに鼻や口を通ってからだの中に入り込もうとしています。健康な人は、鼻やのどの免疫機能が働いてこれらの病原体を排除し、肺には入っていきません。
ところが、高齢者や乳児、病気になって免疫力が衰えている場合などには、病原体がそれらの関門をくぐりぬけ、菌が肺に入りこんでしまうことがあります。そのうえ肺の免疫機能もうまく働かないと肺炎を発症してしまうのです。
また飲み込む力が弱まっているときに、食べ物や飲み物が気管に間違って入ってしまうことがあります。それら異物についた細菌などが肺炎の原因となるのが「誤嚥(ごえん)性肺炎」で、高齢者に多く見られます。

■肺炎の分類
分類 特徴
感染性肺炎 細菌性肺炎 肺炎球菌、ブドウ球菌などによる肺炎 罹患率、死亡率(特に高齢者)が高い。
ウイルス性肺炎 インフルエンザウイルス、はしかウイルスなどによる肺炎 細菌性より症状は軽いが、特効薬はない。
非定型肺炎 マイコプラズマ、クラミジアなどによる肺炎 若年層の罹患率が高く、感染力が強い。
非感染性肺炎 機械的肺炎 誤嚥性肺炎 特に嚥下能力の低下した高齢者に多い。
薬剤性肺炎 抗がん剤などによる肺炎 薬剤の内服・点滴により、罹患する。
アレルギー性肺炎 真菌(カビ)、有機粉塵などによる肺炎 特定の物質に対してアレルギーを引き起こして罹患する。

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2.高齢化で増えた肺炎

全体の死因の第5位、70歳代では第4位

肺炎は戦後になって栄養状態がよくなり抗生物質が普及したことによって大きく減少しましたが、最近は高齢化の影響もあり、死亡原因は上位となっていますが、高齢者を対象とした予防接種などの対応が進められ、死亡数は減少傾向にあります。死亡原因別にみると、三大疾患(がん、心疾患、脳血管疾患)などに次いで5位、とくに高齢になるにしたがって急激に増加し、70歳代では第4位、80歳以上は第5位になっています。(グラフ・表参照)
肺炎で亡くなる人は年間約7.4万人以上、その96%が70歳以上の高齢者です。

主な死因別死亡数の割合
主な死因別死亡数の割合

年代別にみた死亡順位
  第1位 第2位 第3位 第4位 第5位
10歳未満 先天奇形など 周産期に
特異的な呼吸
障害等
不慮の事故 乳幼児
突発症候群
幼児期に関連
する障害
10歳代 自殺 不慮の事故 悪性新生物 心疾患 先天奇形等
20歳代 自殺 不慮の事故 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患
30歳代 自殺 悪性新生物 心疾患 不慮の事故 脳血管疾患
40歳代 悪性新生物 自殺 心疾患 脳血管疾患 不慮の事故
50歳代 悪性新生物 心疾患 自殺 脳血管疾患 不慮の事故
60歳代 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 不慮の事故 肺炎
70歳代 悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故
80歳代 悪性新生物 心疾患 老衰 脳血管疾患 肺炎
90歳以上 老衰 心疾患 悪性新生物 脳血管疾患 肺炎

肺炎の死亡数の年次推移
肺炎の死亡数の年次推移

肺炎の年齢階級別にみた死亡数
肺炎の年齢階級別にみた死亡数

以上、厚生労働省「令和4年人口動態統計調査」より

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3.肺炎の症状とは

肺炎特有の症状が出ないことも

ナットを緩めて外す
肺炎の主な症状は発熱、咳、痰(たん)、胸痛、呼吸困難などです。
ところが、やっかいなことにそれらの症状が現れないことがしばしばあります。高齢者では発熱がないことが少なくなく、食欲不振や元気がないといった、肺炎に至っているとは思えないような症状だけのことも珍しくありません。
また、乳幼児では、あまり咳も出ないで、突然ショック状態や高熱、顔が紫色になるチアノーゼを起こし、そこでレントゲン検査で初めて肺炎と診断されることもあります。
咳、痰も、高齢者の場合やクラミジア肺炎などでは目立たないことがあります。一方、激しい咳が続くときにはマイコプラズマ肺炎(後述)が疑われます。
肺炎は通常痛みを伴いませんが、胸膜の近くに発生すると胸の痛みを伴います。また、胸痛は 胸膜炎を合併している場合にも現れます。呼吸困難は、肺炎が広がっている場合か、肺気腫や肺結核後遺症などで肺の機能が低下している場合に起こります。動脈血中の酸素が不足した状態である「低酸素血症」が認められれば緊急の入院が必要となります。
その他には、とくに高齢者では食事、水分摂取が障害され、脱水状態になっていることも珍しくなく、早急な対応が求められます。

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4.肺炎の診断と治療

薬物治療が中心

肺炎の診断は胸部のレントゲンと血液検査などで行われます。痰を調べたり、胸部のCT検査、血液の酸素状態を調べる検査などが行われることもあります。
治療は病原体にあわせた薬を内服や点滴で、病原体の繁殖を抑えて治療します。また、軽度の場合をのぞいて、肺炎は入院して安静を保つことが必要になります。
5.肺炎は予防が大事

免疫力を高めましょう

肺炎は一度かかると重症化しやすく、また治療薬の効きにくい耐性菌が増えています。ですから、何よりも予防が肝心です。バランスのよい食事や、適度な運動休養をとり、体力の維持増進を図り、免疫力を高めることが肺炎に限らずすべての病気から身を守る特効薬です。
とくに、肺炎の場合は日常生活でのうがい手洗い十分な歯磨きや入れ歯の清掃などで病原体が体内に入っていかないようにすることが有効です。

有効な肺炎球菌ワクチン

肺炎の原因となる病原体でもっとも多いのが肺炎球菌で、約4分の1を占め、60歳以上になると50%を占めています。そのうえ、肺炎球菌性肺炎はとくに重症化しやすく、菌血症、髄膜炎といった重篤な合併症を伴うことも少なくありません。
そこで今、肺炎球菌性肺炎にもっとも強力な予防策として脚光を浴びているのが肺炎球菌ワクチンの接種です。2023年からは、65歳以上の人(日常生活がほぼ不可能な障害を持つ人は60歳以上の人)を対象に定期接種(公費)になりました。このワクチン接種は副作用も少なく、1回の接種で5年間有効です。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンとを接種することによって、肺炎による死亡率が半減し、また肺炎球菌性肺炎による入院が3分の2ほどに減少したという海外報告もあります。
65歳以上の高齢者や糖尿病、喘息などの持病をもつ人は、肺炎球菌ワクチン接種を受けることをお勧めします。
また、生後2か月から受けられる小児用肺炎球菌ワクチン接種は任意ではありますが、生命の危険や後遺症の残ることも少なくない細菌性髄膜炎や肺炎を予防するためには有効なワクチンです。年齢によって接種回数は異なります。
なお、高齢者および小児に対して肺炎球菌ワクチン接種の接種補助(公費助成)を行っている自治体が増えています。小児用はほとんどの市町村が実施しており、対象年齢や費用は各自冶体によって異なります。

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冬に大流行の「マイコプラズマ肺炎」

マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニア」という、細菌とウイルスの中間のような微生物の感染によって、人から人に、主に患者の咳で飛沫感染や接触感染によって拡大します。潜伏期間は2〜3週間と長く、初期症状は発熱、全身倦怠感や頭痛などです。特徴的なのは咳で、多くは初期症状後3〜5日から始まります。痰の少ない乾いた咳が徐々に強くなり、3〜4週間持続します。
マイコプラズマ肺炎は幼少児から青年期に多くみられる肺炎です。
治療は抗菌薬を投与しますが、抗菌薬の効かない「耐性タイプ」が増えているという報告もあります。
合併症として中耳炎や発疹、ときとして髄膜炎、脳炎、心筋炎、肝炎などを起こすことがありますが、一般に、細菌性の典型的な肺炎に比べると重症度は低いとされています。肺炎にしては元気な場合が多く、診断が遅れることがありますので、要注意です。有効なワクチンはなく、国立感染症研究所はせきエチケットやマスク、手洗いでの予防を呼びかけています。
マイコプラズマ肺炎は年間を通じて流行しますが、11月、12月にやや増えるのが特徴です。国立感染研究所はさらに流行が続くと見ています。

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