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相続を考える①

平成27年1月に相続税が改正されました。この改正により基礎控除額が6割下がりました。これは単に納付しなければならない相続税が増えたということだけにはとどまりません。相続した財産が基礎控除額より低ければ、当然、相続税は発生しません。つまり、基礎控除額が下がったということは、それだけ相続税の対象となる人が増えたということになります。「うちの親には税金を払うほどの財産がないから」などと他人事だった人も、対象になる可能性があります。自分が相続人になること、被相続人になることの両方を想定して、相続について考えてみましょう。

相続には準備が必要

相続は「お金」の問題だけに、相続人同士のトラブルや相続税の問題が起こりがちです。特に相続財産の額が大きいときには、慎重さが必要です。被相続人となる人は誰にどのくらいの財産を残すのか、相続税が相続人の負担となることはないのか、よく考慮する必要があります。また、相続人は正しい知識をもっていれば、いざというときに慌てずに対処でき、トラブルを回避することもできるでしょう。被相続人となる人も、相続人となる人も準備が必要です。
1.相続人って誰のこと?

財産の権利・義務を継承することが相続

相続とは、亡くなった人が持っていた財産の権利や義務を継承することです。ここで、財産を受ける人(相続する人)を「相続人」といい、財産を引き渡す人(亡くなった人)を「被相続人」といいます。相続は被相続人の死亡が確認された時点から発生します。

法廷相続人と遺言による相続人

ところで、血縁があれば必ず相続人になれると勘違いしている人はいないでしょうか。法律上では相続人になれる人は決まっています。この法定相続人は配偶者・子(孫)・親(祖父母)・兄弟姉妹(甥・姪)のみに限られ、しかも優先順位が決まっていますから、血縁者がすべて等しく相続人になれるわけではありません(表1)。
それでは、被相続人は相続人を選べないかというと、そうではありません。「遺言書」という手段を使って財産を分け与える人を指定することができます。ただし、そうすると不利益を被る法定相続人が出る可能性もあります。たとえば、Aさんが遺言状に、赤の他人である知人のBさんに財産のすべてを譲ることを書き残したとします。Aさんの妻や子どもは納得するでしょうか。そこで、法律では、一定の法定相続人が最低限の取り分が相続できるように定められています。この「最低限の取り分」のことを「遺留分」といいます。
※配偶者の( )内は、代襲相続人を示します。代襲相続については次の項目をご覧ください。

代襲相続とは?

相続が発生したときに、相続すべき人がすでに死亡していることもあるでしょう。たとえばCさんがなくなって、遺言書がない場合、本来ならば妻と子どもが1/2ずつの割合で相続しますが、子どもはすでに亡くなっていたとします。このとき、孫がいれば、孫が子どもの変わりに遺産を受け継ぎます。このように相続人がすでに亡くなっている場合、直系卑属にその権利が移行することを「代襲相続」、引き継いだ直系卑属を「代襲相続人」といいます。

◆遺言書は定められた形式に従わなければ無効

遺言書を自身で書く場合、この遺言書を「自筆証書遺言」といいますが、いくつかの要件が法律で定められています。この要件が一つでも守られていない場合、遺言書は無効となってしまいます。遺言書は「お金」に関連して遺族の生活を大きく左右することもありますから、安易な気持ちでは取り組まないようにしましょう。また、でき上がった遺言書は間違いがないように、弁護士等に確認してもらうことをお勧めします。
さらに、遺産額が大きい、特別な配慮が必要などといった場合は、最初から公証人に執筆をお願いする「公正証書遺言」の形式をとったほうがよいでしょう(数万円〜十数万円程度の費用がかかります)。公正証書遺言は公証役場で保管されますので、毀損や改ざんの心配がないのも公正証書遺言のメリットです。また、自筆証書遺言は相続時に検認が必要ですが、公正証書遺言は検認が必要ありません。

【自筆証書遺言の要件】
○パソコンの使用は不可。必ず本人(15歳以上)がすべて自筆で文章を作成する。
※財産目録はパソコンで作成して添付することが可能。その場合も遺言者の署名が必要。
○作成年月日を入れる。
○遺言者が署名押印する。
※筆記用具・用紙・縦書き、横書きなどについては、規制はありません。

なお、遺言者が亡くなった後でも、家族等が勝手に遺言書を開封してはいけません(罰則として過料の対象となります)。必ず家庭裁判所で検認を受けてください。法務局の保管制度を利用した場合は、検認は必要ありません。

◆遺留分が認められるのは配偶者・子(孫)・親(祖父母)のみ

遺留分はすべての法定相続人に認められるわけではありません。遺留分を受け取れるのは配偶者・子(孫)・親(祖父母)のみで、兄弟姉妹(甥・姪)には遺留分がありません。遺留分は本来の法定相続分の1/2(父母・祖父母のみの場合は1/3)となっています。
たとえば、Dさんに妻と子ども1人がいた場合、法定相続分は妻1/2:子ども1/2となりますが、遺留分は妻1/4:子ども1/4となります。遺言状では1億円の遺産すべてを知人のEさんに譲ることになっていても、法律の定めにより、実際にEさんがもらえるのは5,000万円で、妻と子どもは2,500万円ずつ相続できることになります。
ただし、Dさん夫妻に子どもがなく、法定相続人が妻とDさんの兄弟となった場合も、遺留分が保障されるのは妻だけで、兄弟は1円ももらえません。

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2.相続で財産はどれくらいもらえる?

法定相続人は常に「配偶者」が優位

遺言書で特に指定されていない場合は、法定相続人とその取り分が法律で定められています(表1)。また、前述のように、遺言書で法定相続分が侵害されるようなことがあっても、遺留分は保障されます。

■表1 法定相続人と法定相続分
法定相続人 優先順位と法定相続分
  第1位 第2位 第3位
配偶者が
いる場合
配偶者 1 1/2 2/3 3/4
子ども(孫) 1/2
親(祖父母) 1/3
兄弟姉妹(甥・姪) 1/4
配偶者が
いない場合
子ども(孫) 1
親(祖父母)
※子ども(孫)がいない場合
1
兄弟姉妹(甥・姪)
※子ども(孫)も親(祖父母)もいない場合
1
※( )内は代襲相続人。
<例1>配偶者がいる場合(法廷相続人)

aさんが亡くなった。aさんの遺産総額は2億円。aさんには妻と、子ども(すでに結婚しているxさん(妻・子ども1人)と独身のyさん)がいる。また、aさんには兄が1人と妹が1人いる。

遺産をもらえる人

・妻 : 1/2の1億円
・2人の子ども(xさんとyさん):1/2をそれぞれ等分し1人5,000万円

遺産をもらえない人

・xさんの妻
・xさんの子ども
・Aさんの兄と妹

<例2>配偶者がいない場合(法定相続人)

bさんが亡くなった。bさんの遺産総額は3億円。bさんは離婚していたため、妻はいないが子どもが1人いる。また両親と兄弟も健在。

遺産をもらえる人

・bさんの子ども:3億円

遺産をもらえない人

・bさんの両親・兄弟
・bさんの前妻

<例3>遺言書がある場合

cさんが亡くなった。cさんの遺産総額は4億円。cさんには別居中の妻も子どもがいる。cさんはいつも面倒をみてくれる友人のzさんに全額を譲ることを遺言書(有効)に記していた。

遺産をもらえる人

・zさん : 2億円
・cさんの妻 : 遺留分として1億円
・cさんの子ども : 遺留分として1億円

遺産をもらえない人

上記以外の人

<例4>借金が遺された場合

dさんが亡くなった。dさんの遺産は1億円だが、負債が2億円ある。dさんには妻と子ども2人がある。

遺産をもらえる人

・dさんの妻 : (資産)5,000万円  (負債)1億円
・dさんの子ども : (資産)1人2,500万円  (負債)1人5,000万円

遺産をもらえない人

上記以外の人

負債も相続される

このように、相続される遺産はプラスの財産ばかりではありません。被相続人が負債を抱えたまま亡くなった場合は、マイナスの財産として相続されます、法定相続人や取り分など、相続のされ方はプラスもマイナスも同じです。

必ずしも相続する必要はない

相続財産といっても負債を背負わされたのでは、たまったものではありません。そこで「相続放棄」という手段があります。相続放棄は各相続人ごとに選択することができます。ですから、母親だけが相続を放棄し、子ども2人だけが資産・負債とも相続することもあり得ます。なお、「相続放棄」はプラスの財産もマイナスの財産もすべてを放棄することです。借金はいらないけれど、資産はほしい、というのは認められません。ただし、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するという方法はあります。これを「限定承認」といいます。「限定承認」は相続人全員で同じく選択しなければなりません。相続人のうち一部の人だけが「限定承認」を選択するということは認められません。

住宅ローンが終わっていない

住宅ローンが終わっていないのに、家族を残して亡くなってしまった…そんな場合、残された家族が住宅ローンを支払っていかなければならないのでしょうか。
被相続人が「団体信用生命保険」(略称:団信)に加入していれば、保証会社が弁済しますので、安心して住み続けることができます。
夫婦共同名義でローンを組んだ場合、団信で保証されるのは該当する片方だけのところが多いのですが、最近ではどちらにでも適用する団信も出てきました

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3.相続財産には税金がつきもの

相続税を納めるのは相続人

相続が行われると、その相続財産は相続税の対象となります。相続税を支払うのは被相続人(亡くなった人)ではなく、財産を譲りうけた相続人です。ですから、被相続人は、自分が亡くなった後の相続人の負担も考慮しておけば両者の不安は軽減されます。
相続税は相続人全員にかかる相続税を計算したうえで、それぞれ相続資産額に応じて個人に按分します。ただし、相続税には「基礎控除」がありますので、相続税額を計算して、基礎控除額以下ならば申告も納付も必要ありません。相続税の申告・納付が必要な人は被相続人の死亡から10カ月以内に行います(図1)。

■図1 相続税の申告・納付まで
被相続人の死亡
  ↓

(3カ月以内)
遺言書の確認
遺産・負債の概算確認
相続放棄等の決定
  ↓

(4カ月以内)
相続人の確認
被相続人の所得税を申告・納税
  ↓

(10カ月以内)
資産の調査・評価
遺産分割協議書の作成
各相続人の相続税額計算
相続税申告書の作成
納税資金の確保
申告・納税

◆死亡退職金も相続税の対象に

【相続税の対象となる財産】
・個人の財産(現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、
家屋など)
・経済的価値が認められる権利
(貸付金、特許権、著作権など)
・みなし財産(死亡退職金、
被保険者が保険料を負担していた生命保険契約の
死亡保険金)など
※みなし財産には基礎控除額があり、これを超えなければ
相続税はかかりません。
など

【相続税の対象とならない財産】
・墓地、墓石、仏壇、仏具など
・公益事業に使われることが確実なもの
など


相続税の計算

相続税の額は、それぞれの相続人の遺産総額を合算し控除を行い全体の相続税を算出したうえで、各人に按分します。
このとき、葬儀費用等は経費として差し引くことができます。また、基礎控除は必ず適用されますので、すべての相続人の相続資産合算額が基礎控除以下の場合は、相続税は発生しません。

(1)相続した純資産額を計算(相続人それぞれ)

*相続時精算課税とは、贈与財産(特別控除2,500万円超)の贈与者が死亡し相続が発生舌場合に、贈与財産 と相続財産を合算して相続税を計算し、すでに納付した贈与税を差し引くことができる制度。

相続税の計算で控除できるもの
○検死や遺体の運搬にかかった費用
○遺体や遺骨の回送にかかった費用
○火葬、埋葬、納骨を行うためにかかった費用
○お通夜や葬式前後に生じた、通常葬式に欠かせないと認められる費用
○葬式で寺などに支払った読経料など

相続税の計算で控除できないもの
○香典返しにかかった費用
○墓石・墓地の購入や借入にかかった費用
○初七日や法事などにかかった費用

(2)それぞれの相続人の相続額を計算
(3)全体の相続額を計算(相続人全員の分) ⇒課税価格の合計額
(4)実際に課税される遺産の総額を計算(相続人全員の分) ⇒課税遺産総額
(5)法定相続分で按分して各法定相続人の取得分を計算
(6)各法定相続人の算出税額を計算
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超2億円以下 40% 1,700万円
2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
(7)相続税の総額を計算
(8)各法定相続人の税額を計算
(9)各法定相続人の納付税額を計算

各種控除 ・暦年課税分の増税税額控除
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
・障害者控除
・相次相続控除(二次相続時など)
・外国税額控除

(10)相続時精算課税等の控除

※相続税が10万円を超え、金銭で納付することが困難な場合には延納を申請することができますが、利子の納付が必要になります。

次回は相続税対策について掲載します。

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