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【株式について】 「売り」のタイミングの難しさ

 中国の投資家から聞いた言葉があります。記憶が定かではないので間違いがあるかもしれませんが、確か「買いは一顧、売りは千顧」という表現だったと思います。投資では買う行為よりも売る行為の方が千倍難しいという意味ですが、「買うという決断は意外に簡単にできるが、売るという決断は難しいし、売った後でもくよくよといつまでも考えてしまう」と筆者は意訳しています。日本でも「相場は買い時よりも売り時が難しい」とよく言われています。機関投資家として資産運用に従事するファンドマネージャーの世界でも、新人は買うことは自分の裁量でできても、売るときは先輩ファンドマネージャーの承認が必要になっている場合があります。それほど、売りは難しいのです。

 売りが難しい原因のひとつに人間の心の癖があげられます。人間は誰しもいやなことを避ける傾向にあります。これは根源をたどれば自己を守る本能に帰すると言われていますから、排除することは難しいのです。そこで、この傾向を知りコントロールする術が必要となります。

 投資において“いやなこと”の代表格は損失の確定です。1,000円で購入した株式が900円になると、100円の損です。しかし、この損は机上のものです。「今は100円の損だが、将来株価が値上がり、いずれは1,500円、2,000円になるだろう」という机上の想像を許す余地があるからです。実際に、売ってしまえばもはやこの想像による癒しを得ることはできません。100円の損をしたという現実に直面しなければならないのです。この“いやなこと”を避けるための損失が出ている場合、往々にして私たちは売ることを控えてしまうのです。この結果、どのようなことが起こるかは想像に難くありません。

 これをコントロールするには、俗に「損切り」と言われるルールが有効です。買い値から10%、20%といった具体的な水準まで下落したら、自分自身の心に有無を言わさず売るのです。売った直後に値上がりするかもしれませんが、この期待を捨てる代わりに、今以上に値下がりしても今以上の損失は負わないという安全を手に入れるのです。

 他にも“いやなこと”はあります。損得の予測不可能性です。1,000円で買った株式が、今日1,100円になったとしましょう。この時点では100円の利益を見越して売るのはいいですが、実際にはブローカーを通じて売りますので、売却価格が1,100円になるとは限りません。今日、発注しても市場で売却されるのは翌日、翌々日になる場合もあります。発注をしてぐっすり眠っていても、地球の反対側では天変地異や大紛争が勃発しているかもしれません。夜の間に市場が大きく下落して、実際は900円で売れてしまった、ということすら想定できるのです。100円の益のつもりが、自分の手の届かないところで100円の損になってしまうのです。

 この予測不可能性を排除することはできません。いつ市場が下がるか上がるかを予測することと同義だからです。予測不可能であれば、リスクを減らすことが大切です。時間(タイミング)と資産を分散するのです。買うときにも分散投資を行いますが、原理は同じです。売るときに一回で売るのではなく、一定期間(3か月等)内に等金額ずつ分けて(3回等)売るといった工夫をします。これにより、突発的な事象や相場変動の波の影響を抑えられます。

損失の確定 ⇒ 損切り(タイミングの見極め)  
損失の予測不可能性 ⇒ リスクの回避(タイミングと資産の分散)

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