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【株式について】 自信過剰25%割引ルール

  コントロール幻想という言葉があります。「自信過剰なあまりコントロールできると過信してしまうこと」を意味する行動経済学の言葉です。例えば、自社株投資が代表例です。自社株に投資をしている場合の心の動きは次のようなものが典型的ではないでしょうか。

 「私は自社株に投資している。他の会社の株の動きはわからないけど、自社株であれば、自分の会社の株だから誰よりもよくわかるはずだ。だって、日々、自分が働いているのだから自社株が上昇するのも、下落するのもわかるに違いない。自社株についてはコントロールができるのだ」

 さて、この心の在り様、すなわち思いこみはコントロール幻想なのです。確かに自分が勤務している会社のことはよくわかりますが、自社の株価の動きまではわかりません。経営者であるか、財務の全てを把握しているといった場合は可能かもしれませんが、一般的には予測できません。

 財務のことを知らずとも、株式市場のことを知らずとも「自分の会社だから」という過剰な自信がこの幻想を生むのです。まさに自信過剰の状態です。自信過剰になると臆病さがなくなりますので細部に対する注意力が散漫になります。結論が分析に先立ってしまうために、本来であれば留意すべき項目が無視されるのです。

 日本の株価は今年度どれぐらい上昇するでしょうか?我々が資産運用を行うときに必ず自問自答する問いかけです。実はこの問いかけにはすでに自信過剰の影響が現れています。“どれぐらい上昇”と問いかける段階で、株は上昇するものだという自信が過剰なのです。

株価≠必ず上昇するもの  自信過剰の主因は2009年の世界的な株価回復劇によるものでしょうか。2009年年末の12月27日、日本経済新聞一面に「世界の株価26%上昇 09年は10年ぶり高い伸び、政策協調を好感」このような文字が躍っていました。これを読んだ私たちは、株価は上昇するものだ、という先入観に囚われはじめます。その前年度までの数年間はマイナスだったのにそれを忘れているのです。ご参考までに2007年度は−28%、2008年度は−35%だったのです。

 日本の株価はどれぐらい上昇あるいは下降するだろうか?という問いかけをすることが、自信過剰を排除する正しい姿勢だといえましょう。

 自信過剰をいましめる例はもうひとつあります。

  「株価は50%上昇した」
    ↓
  「私の保有している株式投信も同じ程度上昇しているはずだ」
    ↓
  「したがって、私の財産価値は50%上昇した」

という自信過剰です。このプロセスでは手数料のことを忘れています。

 株式の投資信託は、一般的に購入時の販売手数料と保有時の信託報酬という費用がかかります。仮に株価が1万円から1万5,000円に上昇したとしても、費用がかかる株式投信の価値は同じようには上昇しません。筆者の試算では1万4,300円程度にしかならなりません。手数料による価値の下ぶれは無視できないほど大きいのです。

 自信過剰のメカニズムを取り除くことは至難の技です。注意すべき項目が複雑多岐にわたりますから資産運用のプロでも対処しきれません。欧米では「自分の予想から25%割り引いて考えろ」という心のルールが活用されています。株価が1万円上昇すると思ったら、25%の自信過剰分を差し引いて7,500円だと考えればよいのです。25%という数値には科学的な裏付けはありません。いろいろな経験を踏まえ、伝承として自信過剰に見合うのが25%となっているのだと思います。「私は謙虚だから10%の割引にしよう」って?いえいえ、それこそ自信過剰の表れです。

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