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【旅と日本の器D】沖縄やちむんをめぐる旅〜中編・やちむんの里(読谷村)・常秀工房を訪ねて〜

前編では、那覇市立壺屋焼物博物館に協力を得て、やちむんの歴史についてご紹介しました(前編の記事はこちら=http://www.zenshakyo.org/ikigai/feature/index.html)。

やちむんの里

中編となる今回は、壺屋から登り窯をつくるため読谷村に移動し、「やちむんの里」で工房をかまえて30年の「常秀工房」にお邪魔しました。親方である島袋常秀さん、そして親方の娘さんでいらっしゃる松田さんに壺屋焼=やちむんについて、色々お話しを伺いました。


常秀工房の次世代を担う、島袋常秀さんの娘さん、陶工の一人であられる松田さんに、工房について、やちむんの特徴などを伺いました。

常秀工房での「壺屋焼」完成までの工程を教えてください。

赤土でろくろをひき、白化粧を表面にかけて透明釉という釉薬をかけ、素焼き、絵付け、本焼きです。素焼きをしない工房もありますが、うちは「蝋抜き」という溶かした蝋を塗り、釉薬を全体にかける「ずぶ掛け」という技法を使っているので、素焼きをしないとその後の工程で水分を吸いすぎて形が崩れやすいので。

常秀工房オリジナルの柄はありますか?

「呉須蝋抜き」ですかね。絵付けの時に「緑釉」と「飴釉」を点打して蝋をかぶせ、呉須でずぶ掛けしたものになります。蝋でかぶせたところが水をはじき、その部分の色が焼いた後に出てくる技法です。本焼き前は全部グレイで覆われているので見えず、焼かれた後に分かるという。たまに打ち間違えや「同じ色がかぶっていた」という失敗も(苦笑)。「呉須」は青で、「飴」は茶、「オーグスヤー」は緑。ですから、「オーグスヤー蝋抜き」は、「オーグスヤー」でずぶ掛けしたもので全体が緑がかった色味に仕上がります。よく売れるのは「唐草模様」や「点打」ですかね。沖縄らしいというかチャンプルーなイメージがあるのかな、って。

【左上】呉須蝋抜きでつくられた左が本焼き前のマカイ(碗)。右が焼かれた後に、模様が出てきた完成品。【右上】点打(ドット柄)で描かれた器を前に語る松田さん。【中央】唐草模様の絵付け後。【下】「オーグスヤー蝋抜き」のお皿。蝋の中には飴釉と呉須釉が入っているので焼きあがると緑の中に青のグラデーションが浮き出てくる。

「やちむん」ならではのカラーってありますか?

壺屋伝統の釉薬は、「呉須」、「オーグスヤー」、「飴」、「黒」、白化粧の「白」。この5色が基本です。

常秀工房の皆さんは、どんなサイクルでつくられているのでしょう?

登り窯と祭り(陶器市)の日程は絶対なので、そこに合わせて動いています。絵付けに集中する期間もあれば、つくりに集中する期間も。1日の流れとしては、9時〜18時で、昼休憩と15時半から30分お茶タイムを設けています。みんなで会話しながらおやつを食べるのですが、いい息抜きになっています。

「壺屋焼」を学びたいと言って工房にくる弟子はどんな経緯で?

うちの工房では、県内より本土から来た人の方が多いです。学校を出てくる人もいれば、一から教えてくださいという人も。ここで勉強をして、いつかは独立したい、と考えている人がほとんどです。工房がスタートして30年ですが、独立した人は今までで10〜20人ぐらいですかね。読谷や恩納村、壺屋など、ほとんどが沖縄県内で独立していて、距離が近い方が、横の繋がりや情報交換がしやすいというのもあるんだと思いますよ。

弟子の受け入れってどんな感じでしょう?

沖縄はオープンな方かと。常秀工房はやる気があればいくらでも教えるよ、というスタンスです。弟子には、“常秀工房としての商品をつくっている”というベースさえ意識してもらえれば、他に「こうであるべき」というのはない気がします。親方は学校の教授という立場で指導にもあたっているので、若い人と交流する機会も多く、壺屋焼に興味をもって学ぶ生徒たち含め、焼物をやりたい人たちに真摯に向き合っていると思います。次世代に繋げていこう、という気持ちもすごくありますし。何より、親方自身がつくることへの情熱がすごいので、その姿勢は弟子にもしっかり伝わっているんじゃないかな。後ろで見ていても、メラメラしていて熱いな〜って私もよく思うので(笑)。

工房としての今後の展望は?

昨年、工房横に資料館を作りました。今まで作り続けてきた基本の形や色、柄をきちんと引き継いでいけるよう、見本となる常秀工房でつくった過去の壺屋焼を収納しています。今まで作り続けてきた良いものをこれからも引き継いでいくこと、基本はそこです。でも、私としては、生活に密着した新商品も少しずつつくっていけたらいいなとも思っています。

【左】資料館の引き出しには大小様々な壺屋焼が。【中央】点打の湯飲みなどを前に身振り手振りで説明してくださった松田さん。【右】沖縄の県花であるデイゴの花や伝統的な唐草模様が描かれたお皿。

松田さんを取材中、横でつくりに集中されていた親方、常秀さんに何と!お話を伺うことができました。工房の親方と言うとちょっと怖い!?そんなイメージがありましたが、穏やかで、物腰柔らかい雰囲気を携えた方でした。「ワクワク、どきどき」そんな言葉が飛び出すほど、今も変わらず壺屋焼に情熱を注ぎ続ける常秀さんのお話、必読です。

「やちむんの里」と言えば「登り窯」。「登り窯」の魅力とは?

昔はガス窯がなくて、登り窯で全て焼いていましたから。登り窯は薪で焚くから、薪釉もかぶって、味わいのある色に仕上がるし、その時にしか出ない色味がありますよね。ガスだと味気ないものになっちゃう。毎回、登り窯に火を入れる時は、お米や塩、線香などお供えして、1番から6番まで生まれますように(=よく焼きあがりますように)と祈りをこめて『生まれしそーめ』と言うんです。昔から変わらず続けている儀式みたいなものですね。

うちはガスと登り窯両方使っているけれど、登り窯の方は共同だから、1回でたくさん焼けるように棚板を組んでいて。置く場所によっても、薪釉のかかり具合が違うし、酸化焼成や還元焼成によっても変わってくるから、焼き色が安定しない。でもそれが登り窯の面白さだよね。

【左上】共同窯の「次郎窯」。屋根と囲いがあるので風の影響を受けにくい。【左下】燃料となる薪は油分を多く含む松がベスト。この量で1〜2回分。3日間窯に薪をくべ続ける。【右】常秀工房が使用している5番の窯内。棚板に、焼物を何枚も重ねて焼く。

常秀さん(親方)は「けろくろ」を使われていますよね?弟子の方も?

いやいや、「けろくろ」は私だけです。皆は電動ろくろですよ。私は体がけろくろに慣れてしまっていて。けろくろを使うと、左右どちらも使うし、手足両方使って腹筋が鍛えられ、腰も痛まない。だから「けろくろ健康法」って私は言っているんだけれど(笑)。このろくろには、水に強く腐りにくい松の木を使っていて。常に水を使いますから、水に強いというのは大事です。それに松には木に油分=松脂を含んでいるので重たい。ある程度まわるとその重さの遠心力で自然にまわるし、蹴りながら同時にぐーっとつくれる感覚があります。

【左上】「けろくろ」を使って飯碗を作成中の常秀さん。蹴っている部分が使い込まれた飴色に。【中央・右】遠心力と道具を使い、手の感覚のみで土をスーッと削っていく。削りが少なくてすむように成形しておくのも大事なポイント。

常秀さんにとって、焼物の魅力とはどこでしょう?

焼物は火を通して出来上がってくるものでしょ。つくっている時にいいな、と思っても窯から出したら「あ〜良くないな…」と寂しくなる時もあれば、すごく良く出来上がって嬉しくなる時もある。窯出しの瞬間が一番ドキドキ、わくわくして楽しいですよね。何度やって、どんなものか分かってはいても、その瞬間に楽しさ、喜びがあるから続けられているんだと思います。

最初はつくっていて単純に楽しい。そして食器ですから、実際に皆さまに使っていただいてこそです。手にした方々に「使い勝手が良かった」「また買いに来ました」なんて言っていただけると、すごく嬉しいですし、また頑張ろうという気持ちになりますよね。ここ数年、一般の方々の伝統工芸に対する意識が高くなってきているように感じます。特に陶器は手軽に手にしやすいこともあって、陶器市は年々すごい賑わいですよ。伝統工芸を見る目が変わり、県内の居酒屋も壺屋焼に盛り付ける店も増えてきている。若い方に認識されつつある流れは、作り手側からしたらとても喜ばしく、その分、気合も入ります。

【上】【左下】必ず見本を置いて作業するという常秀さん。【右下】道具もお手製が多い。

30年を迎えた常秀工房、今後はどんな風にしていきたいなどありますか?

今まで続けていたことを子供たちにも繋いでいきたい想いから作ったのが工房横の資料館です。実際使っている絵具や資材、小さなぐいのみから壺まで今までつくってきたもの全てを資料館に収めました。これを手本に続けていってもらう。でもそれだけじゃだめですよ。

若い人たちがもつ感性があるから、今あるものにプラスアルファの感性で時代に合ったものをね。昔はマグやジョッキ、ボウルもなかったわけで…。珈琲文化が台頭して今ではマグなんて当たり前ですが、そうやって、モノも時代に応じてどんどん変わるから、新しい時代に対応してつくっていかないと。今までの良いものはきちんと引き継ぎつつ、時代のニーズに応えて変化もしていく、それが常秀工房の今後でありたいなと思います。

【上】資料館内に置かれた色見本と絵付け用の筆や見本となる常秀工房の焼物がズラリ。写真はそば猪口。【中央】引き出しや棚にも所狭しと収納されている。【下】資料館がある場所は工房のすぐそば。植物に囲まれた心地よい場所。

撮影協力(写真):田島ふみえ

■常秀工房
読谷村「やちむんの里」にある島袋常秀さんの工房。入口からすぐそばの工房で、現在娘さんでいらっしゃる松田さんをはじめ10数名が働く。常秀工房の器を購入できるショップ「ギャラリーうつわ家 やちむんの里」を併設。問い合わせ番号は090-1179-8260。


田中恵子(編集/ライター/フードスタイリスト)
編集プロダクション・WEB制作会社など数社経て、現在はフリーランスに。編集・ライティングから撮影スタイリングまで、雑誌や書籍、WEB媒体にてフードをメインに活動中。飲食取材は年間150店舗以上。みなとみらい周辺の情報誌「mirea」の編集長。また、「祐成陽子クッキングアートセミナー」卒業後、『食べることの楽しさ、美味しさを伝える』定期的なイベントや誌面スタイリングを提案する部活動「dots drops」を主宰。
https://dotsdrops.com/

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